親の介護は誰がする?費用やよくある問題と今からできる準備を紹介

2023.08.17 介護事務

【医療事務のパイオニアソラスト監修】子供には親を介護する義務があります。
親が高齢になるにつれて、老後の介護に関して不安に思う方も多いでしょう。
介護を受ける施設や介護を担当する人、金銭面など、高齢者の介護にあたって考えなければならないポイントはたくさんあります。
親の介護を円滑に行うためには、兄弟間での連携が欠かせません。
いざ介護が必要になった時に揉めないためにも、事前に親族間で介護に向けた相談や準備をしておくと安心です。

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高齢になった親の介護は義務!放棄できません

親の介護は放棄できないことをご存知ですか?

民法では、以下のように記されています。

【民法第877条 第1項】直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある。

【民法第752条】夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

親の介護は、日本の法律で定められている義務なのです。

図で見てみましょう。

・直系血族
・夫婦(配偶者)
・兄弟姉妹

色を問わず枠で囲まれた人全員が介護者の対象となります。
要介護者の扶養・扶助の義務があるということです。

また、介護の放置は刑事罰につながることがあります

・保護責任者遺棄致死罪
・保護責任者遺棄致傷罪

この2つが該当し、懲役3か月以上5年以下の実刑となります。

経済的に余裕がある人が、親との不仲を理由に扶養義務を放棄することはできないので注意しましょう。

親の介護でよくある問題とトラブル

義務とされている親の介護ですが、問題やトラブルとも隣り合わせです。

①介護疲れによる精神的なストレス
②介護による肉体的な負担
③親族同士での人間トラブル
④介護費用による金銭的な負担

このような問題やトラブルがよく聞かれます。

いざ介護が始まっても慌てないように、それぞれ詳しく解説します。

介護疲れによる精神的なストレス

介護に追われ、介護者自身の時間が無くなることは想像に容易いことです。介護者のリフレッシュする時間が無くなり、精神的なストレスを感じる傾向にあります。

介護には当事者間のケアのみならず、ケアマネジャーや医療機関、役所といった多方面の対応も求められます。また、家族がいる場合は関係を取り持たなければならないこともしばしば。

介護疲れという言葉のごとく、疲労がたまりストレスを感じやすくなってしまいます。

周囲の手助けや声かけなどで予防していきましょう。

介護による肉体的な負担

在宅介護の場合に多いのが、肉体的な負担です。介護度にもよりますが、移動や排泄介助、入浴、着替えなど体を使った介助回数は多いものです。

1日に何度もおこなっていると、腰や肩、腕、膝などを痛めてしまうこともあります。

24時間介護が必要な場合は、睡眠不足や休養が取れなかったりすることも。

疲労がたまり、肉体的な負担が多くなっていきます。

身体を壊してしまう介護者もいるので、周囲の手助けやプロを頼ることも検討しましょう。

親族同士での人間トラブル

親の介護をきっかけに、親族同士で人間トラブルが起こったというケースもよくあります。

原因は事前の話し合いができていなかったことがあげられます。

いざ介護が始まると、近くに住んでいる人の負担が大きくなりがちです。

「遠方だからたまに手伝う。」「子供の学費がかかるから介護費用は出せない。」など個々の事情で介護に参加しないと、トラブルの元ですよね。

キーパーソン(主介護者)を決め、親族間で協力していくことが重要です。

介護費用や介護の負担について、該当する介護者で話し合っておくのがトラブル回避の得策です。

介護費用による金銭的な負担

介護には金銭的な負担もかかります。

特に、老人ホームへの入居や在宅介護での環境整備などに大きなお金が必要です。

もちろん、介護保険や福祉用品への補助やおむつサービスなどの自治体ごとの公的サービスを使ったりすれば金銭的な負担は軽減できます。

しかし、介護のために介護者が離職する必要があれば、収入をカバーしなければならなかったり、介護度によっては金銭的な負担が大きかったりするのが実情です。

親の年金や預貯金、介護者のサポートでまかなえない場合は、親に生活保護を受給してもらう方法もあるので検討してみてください。

親の介護をする前に親族で相談したい4つのポイント

ときに突然始まる親の介護。

トラブルを避けるため、親族間で事前に相談しておくのがおすすめです。

①介護保険について
②在宅介護にするか施設介護にするか
③誰が介護を担当するか
④介護にかかる費用

こちらでは、親の介護をする前に親族で相談しておきたい項目を4つご紹介します。

①介護保険について

国の制度に介護保険があり、40歳以上は加入義務があります。
介護保険のサービスは要介護認定を受けると利用できます。

親の介護が必要になったら申請が必要なので、誰が申請するのか話し合っておくことがおすすめです。

要介護認定は程度によって分けられますが、以下の状態のときに認定されるものです。

要介護状態
寝たきりや痴呆などで常時介護が必要

■ 要支援状態
家事や身支度などの日常生活に支援が必要

【介護保険を利用すると受けられる主なサービス】
・介護サービス利用時の相談やケアプラン作成
・自宅で受けられる家事援助サービス
・施設で宿泊しながら受けられるサービス(長期・短期)
・訪問や宿泊、デイサービスなど
・福祉用具の貸与や購入のサービス

要介護認定を受けると介護に必要なサービスが受けられます。

実際にサービスを受けるために、最寄りの市区町村の窓口に要介護認定の申請をしましょう。

申請や利用に関する詳細はこちらの「介護保険制度とは?仕組みやサービス内容をわかりやすく解説【介護事務に必要】」記事をご覧ください。

②在宅介護にするか施設介護にするか

親の介護が決まったら、在宅介護か施設介護のどちらかが基本になります。

どちらがいいかは一概に言えませんが、金銭面だけを見れば在宅介護に軍配が上がります。

【かかる費用の平均】
・在宅介護 4.8万円 / 月
・施設介護 12.2万円 / 月
出典:(公財)生命保険文化センター「「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度」

しかし、在宅介護では介護者の負担が大きくなるのは必然です。

費用をおさえたい場合は在宅介護がおすすめですが、施設介護は24時間プロがサポートしてくれるので安心感があり介護者の負担も減らせます。

経済状況や家族の生活スタイルなどを考慮し、親族間で相談しましょう。

ケアマネジャーの意見を取り入れるのもいいですね。

③誰が介護を担当するか

「誰が介護を担当するのか?」

これも重要なポイントです。

主に介護を担当する人をキーパーソンと呼びますが、キーパーソンにすべてを押し付けることがないように役割分担は必須。

キーパーソンが経済面から実際の介護や役所への手続きなどのすべてをおこなうワンオペ介護は長続きせず、ひずみを生みます。トラブルの原因になることが容易に想像できますよね。

必要な介護は人によって違うものです。
どんな介護が必要なのかを親族間で具体的に話し合い、事前に分担しておきましょう。

④介護にかかる費用

介護で悩ましくトラブルになりやすいのが経済的な問題です。

介護期間の平均が約5年とされ、総額では498万円かかるという調査結果(※)もあるほどお金がかかるもの。

(※)出典:公財)生命保険文化センター「「生命保険に関する全国実態調査」

基本的には親の年金や預貯金でまかなうものですが、場合によっては介護者が負担しなければなりません。

デリケートな話だからと後回しにせず、親の金銭状況を含め親族間で話し合っておくのがトラブル回避のコツです。

介護費用の捻出に困ったら、免税制度の利用も考えましょう。

介護に使える免税制度
・特定入所者介護サービス費
・高額介護サービス費
・高額医療・高額介護合算療養費
・社会福祉法人などの利用者負担軽減制度
・医療費控除

生活保護を受ける選択肢も視野に、親族間で話し合ってみてください。

介護が必要になる高齢者の数は75歳から急増

介護が必要になる高齢者は年々増加しています。

【要介護・要支援認定を受けた人数】
・2009年度 469.6万人
2019年度 655.8万人
出典 内閣府令和4年版高齢社会白書(全体版)

10年間で186.2万人も増えていることがわかります。

年齢別に見ると、75歳以上が突出しています。

年齢別の要介護・要支援認定を受けた人数

年齢要介護要支援
65~74歳49万3千人23万4千人
75歳以上421万9千人161万3千人
出典:内閣府令和4年版高齢社会白書(全体版)

75歳以上で要介護認定を受けた人数は421万9千人で、被保険者の23.1%に及びます。

早い人では60〜65歳でも介護が必要になることも

転倒や骨折などのケガをきっかけに介護が必要になる人も多く、急に介護が始まる場合も少なくありません。

親の介護が急に始まっても困らないために、事前にどうやってサポートしておくか考えたり相談しておけると安心です。

介護に関する知識があると、いざという時も安心

いざ親の介護が始まるというとき、介護に関する知識があると安心ですよね。

介護の資格に「介護職員初任者研修」(ヘルパー2級)があるのはご存知ですか?
介護職員初任者研修は、介護職として働く上で基本となる知識・技術を習得するもので、公的資格です。

あわせて読みたい記事:介護職員初任者研修とは?資格取得の方法やメリットについて解説

まとめ:親の介護には兄弟間での協力が不可欠!早めに準備を始めよう

いつか直面する人が多い親の介護は、放棄できない義務です。

親の介護に伴って兄弟を含む親族間でトラブルになりやすいのも実情。

・介護保険について
・在宅介護にするか施設介護にするか
・誰が介護を担当するか
・介護にかかる費用

トラブル回避のためにこのようなポイントを抑えて、親族間で早めに話し合いの場を持っておくのがおすすめです。

また、介護者になる可能性がある場合は事前に介護知識をつけておくと安心ですよ。
自身が払うことになる介護保険について知っておくと、いざという時に役に立つうえ、介護者になっても慌てません。

ぜひこの機会にご検討ください。