
医師事務作業補助者になるには?資格取得方法やメリットについて解説
2022.07.07 医療事務
医療機関では、医師や看護師、検査技師のように直接患者さんに医療行為や検査を行う仕事が多いイメージがありますが、それだけではありません。医療に関連する事務作業も多岐に渡り、多くの職種が存在しています。その中のひとつに、医師が行う事務作業を代行する「医師事務作業補助者」という職種があります。この記事では医師事務作業補助者について、仕事内容やメリット、求められるスキルなどについて紹介します。
2022.07.07 医療事務
医療機関では、医師や看護師、検査技師のように直接患者さんに医療行為や検査を行う仕事が多いイメージがありますが、それだけではありません。医療に関連する事務作業も多岐に渡り、多くの職種が存在しています。その中のひとつに、医師が行う事務作業を代行する「医師事務作業補助者」という職種があります。この記事では医師事務作業補助者について、仕事内容やメリット、求められるスキルなどについて紹介します。
医師事務作業補助者は、医師の指示のもと、処方箋や診断書などの文書作成、カルテ入力など、医師が行う事務作業を代行して行う職種です。医師事務作業補助者は「ドクターズクラーク」、「医療クラーク」とも呼ばれ、大学病院のような大規模な施設を中心に活躍しています。
医師事務作業補助者は2008年に誕生した比較的新しい職種で、同時に医師事務作業補助体制加算という点数も新設されました。
医師事務作業補助体制加算とは、医師事務作業補助者を配置し一定の基準を満たしていることで得られる診療報酬点数のことです。主に特定機能病院や大学病院のような比較的規模の大きな医療施設で導入されています。医師事務作業補助者が新設された背景には以下の2つがあるとされています。
昨今、医師をはじめとする医療従事者が不足していることが社会的な問題に挙げられています。医師不足により医師1人あたりにかかる負担も大きくなり、適切な医療環境を提供することが困難になります。医師事務作業補助者の配置は、医師が行ってきた事務作業を代行し、医師不足対策としての期待も込められているのです。
医師の業務は診察、処置、カルテ記載、各種書類作成など多岐にわたり、その仕事量の負担が長年問題視されていました。医師の業務量が多ければ多いほど、医療の質が低下することが懸念され、いかに診療に集中できる環境を整えることができるかが課題でしたが、医師事務作業補助者の配置によって、それを解消することが期待されています。
医師事務作業補助者はどのような仕事をするのでしょうか。具体的な仕事内容を紹介します。
診断書や処方箋、紹介状、各種保険の証明書など、本来は医師が作成する医療文書を医師の指示のもと、医師事務作業補助者が作成を代行します。また、行政への報告書類の作成や入力なども行います。
診察室に同席し医師の診察や検査結果、治療方針などを聞きながら内容をカルテに入力します。また、内服薬の処方や注射、検査・処置のオーダーなどの入力も担います。
患者さんの診察によって得られたデータやレントゲン写真、血液検査の結果などを管理・整理するのも医師事務作業補助者の仕事です。
「救急医療情報システム」や「感染症サーベイランス」といった行政が管轄しているシステムへの入力作業を行います。ほかにも厚生労働省へ報告する診療データの管理や医療事故を防ぐためのインシデントレポート作成、感染症に関する情報収集なども重要な仕事です。
院内におけるがん登録などの統計資料作成や調査、院内会議の準備や議事録の作成など、医師がより質の高い医療を提供するためのサポートを行います。
医師事務作業補助者は直接医療行為を行わないため、特別な資格や経験がなくても仕事に就くことが可能です。
ただし、入職後6ヶ月の研修期間が必要で、実際に働くためには厚生労働省が指定する32時間以上の基礎研修を受ける必要があります。基礎研修で学ぶ内容は主に以下の内容です。
1.医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法等の医療関連法規の概要
2.個人情報の保護に関する事項
3.当該医療機関で必要とされる一般的な医療内容および各配置部門における医療内容や用語等
4.診療録等の記載・管理および代筆、代行入力
5.電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む)
※32時間の基礎研修が免除になるケース
・医師事務作業補助者が新たに配置される前に基礎知識の習得にかかる研修を受けている者
・診療情報管理士の資格取得者(平成20年5月1日認定以降、認定番号13405以降)
・平成17年7月以降入講の日本病院会診療情報管理士通信教育修了生
医師事務作業補助者に関連する資格には、
・医師事務作業補助者(ドクターズオフィスワークアシスト®)検定試験
・医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク®)
・医師事務作業補助者実務能力認定試験
の主に3つがあげられます。 医師事務作業補助者として働くためには必ずしも資格は必要ありませんが、これらの資格を事前に取得して、医療に関する専門的な知識を証明することで、就職・転職時に有利になったり、仕事をスムーズにこなすことができるでしょう。これらの資格は民間資格ですが、主催する団体や試験内容が異なるので、それぞれの特徴について紹介します。
医師事務作業補助者検定試験は、技能認定振興協会(JSMA)が主催する資格試験です。合格すると「ドクターズオフィスワークアシスト®」の称号を取得でき、医師事務作業補助者としての知識とスキルを有していることが証明されます。受験資格は特に決まりがないため、誰でも試験を受けることが可能です。(在宅受験)
試験内容は、医師の事務作業を補佐するために必要な知識が問われる学科と、カルテから診断書や処方箋などの書類を作成する実技試験で構成されていて、いずれも選択問題です。
出題範囲は以下の項目となっています。
・医師事務作業補助者とは
・医療関連法規
・医療保険制度
・介護保険制度の概要
・個人情報保護
・電子カルテシステム
・医療機関の安全管理
・院内感染予防
・医学・薬の基本知識
・診療録の記載事項・院内帳票・各種診断書・証明書・申請書作成
>JSMA医師事務作業補助者(ドクターズオフィスワークアシスト®)検定試験について
医師事務作業補助技能認定試験は、一般財団法人日本医療教育財団が主催している試験です。合格するとドクターズクラーク®の称号を取得することができます。受験資格は、以下の項目のいずれかに該当している人です。
①教育機関などが実施する教育訓練のうち、認定委員会が認定規程によって指定する「医師事務作業補助技能認定試験受験資格に関する教育訓練ガイドライン」に適合すると認めるものを履修した者
②医療機関等にて、医師事務作業補助職として6ヶ月以上(32時間以上の基礎知識習得研修を含む)の実務経験を有する者
③認定委員会が上記①②と同等と認める者
試験内容は、医師事務作業補助基礎知識に関する学科と、医療文書作成の実技試験から構成されています。出題範囲は以下の項目となっています。
学科
・医療関連法規
・医療保険制度
・医学一般
・薬学一般
・医療と診療録
・医師事務作業補助業務
実技
・医師事務作業補助業務
医師事務作業補助者実務能力認定試験は、全国医療福祉教育協会が主催している試験です。上記2つのような、合格者に与えられる称号は特にありませんが、医師事務作業補助者に求められる知識や文書作成能力を有していることが証明されます。受験資格は特に指定はなく、誰でも在宅にて試験を受けることが可能です。
試験内容は、マークシートによる学科試験と、各種書類作成による実技試験から構成されています。出題範囲は以下の項目となっています。
学科
・医療関連法規
・医療保険制度等
・ビジネス文書
・医療安全管理と個人情報の保護
・医学・医薬品・臨床検査の知識
・診療録、電子カルテシステム、文書作成
実技問題
・SOAP形式の診療録作成(手書き)
・各種文書作成(診断書、診療情報提供書、処方箋 等)
医師事務作業補助者になると、さまざまなメリットが得られます。どのようなメリットが得られるのか、具体的に見ていきましょう。
32時間の基礎研修受講者や医師事務作業補助者の経験があると、転職や就職の際に有利に働く可能性があります。求人では、未経験者でも可能とされていることが多いですが、医師事務作業補助者に関する民間資格を有していたり、実際に働いた経験があると、差別化が図れるため就職先が見つけやすいでしょう。
医師事務作業補助者は2008年に導入された、比較的新しい職種です。医師の負担を軽減し、より医療の質を高めていくこと、医師不足の解消などの狙いから、今後ますます需要が高まっていくことが予想されています。
医師事務作業補助体制加算も引き上げられていることもあり、医師事務作業補助者は今後、将来性のある仕事であるといえるでしょう。
医師事務作業補助者の仕事内容は、医師のカルテ作成を代行したり、書類を作成したりするため、医療の専門的な知識を得ることができます。そのため、自身のスキルアップにもつながり、活躍の場を広げることができるでしょう。
医療機関は、医師や看護師をはじめ、国家資格を持った人が多く働いています。しかし、医師事務作業補助者は、特別な資格や経験がなくても働くことができるため、未経験者でも働くことが可能です。
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医師事務作業補助者と医療事務は、同じ医療系の事務仕事ということで似ている部分もありますが、どのような違いがあるのでしょうか。具体的な違いについて見ていきましょう。
医療事務スタッフは受付窓口で、患者さんの受付や会計をするのが主であるのに対し、医師事務作業補助者は医師のサポートが主です。そのため受付窓口ではなく、診察室など医師のそばでカルテの代行入力や書類作成を担います。医療事務スタッフは患者さんやそのご家族との関わりが深く、医師事務作業補助者は医師との関わりが深いのが特徴です。
医療事務スタッフは、診療報酬を算出して診療報酬明細書(レセプト)を作成・点検します。それに対し、医師事務作業補助者は、医師の指示のもとでの紹介状や診断書の作成、入院手続き関連の書類などの作成や診療に関するデータ整理、医師による教育や研修・カンファレンスのための準備作業を担います。
医師事務作業補助者と医療事務の違いについて前述しました。それに付随して医師事務作業補助者が行うことができない業務がいくつかあります。主なものについて見ていきましょう。
医師事務作業補助者は、基本的に医師から指示された業務を行うのが主な役割です。「医師事務作業補助体制加算」の要件では、医師以外の指示は受けないと定められており、看護師や薬剤師など、ほかの医療職から依頼された業務については行うことができません。
レセプトとは、「診療報酬明細書」のことを指し、そのレセプトをまとめて保険者に診療報酬を請求することがレセプト業務です。これは、医療機関が収益を得るために欠かせない業務です。基本的には医療事務スタッフが担う業務であり、医師事務作業補助者の業務にはレセプト業務は含まれません。
医療機関には看護助手という職種があります。看護師が行う処置の準備や片付けをしたり、患者さんのお世話をしたりするのが主な業務ですが、これらは医師事務作業補助者の業務には含まれません。
医師事務作業補助者は未経験者でも働くことができ、必ずしも資格が必要ではありません。しかし、専門的な仕事であるため、ある程度のスキルは求められます。医師事務作業補助者に求められる具体的なスキルについて紹介します。
医師事務作業補助者は医師とのコミュニケーションが必須です。医師が診察した記録をカルテ入力したり、必要な書類を不備なく作成したりと、密な連携を取りながら仕事を進めていかなければなりません。時には医師だけではなく、患者さんやほかの医療従事者ともコミュニケーションを取りながら仕事をすることもあるでしょう。そのため、自分から積極的に話かけて、必要な情報を引き出せるようなコミュニケーション能力が医師事務作業補助者には求められます。
医師事務作業補助者の仕事は、カルテ入力や書類作成の代行が中心であり、ある程度のパソコンスキルが必須になります。
複雑な機能を使いこなすほどのスキルは必要ありませんが、ワード(Word)やエクセル(Excel)の基本的な操作は必要です。また、医師の診察と同時にカルテ入力をすることもあるため、スムーズなタイピング能力は身につけておくのが望ましいでしょう。
医師が診察で患者さんと会話している内容を要約してまとめることも、医師事務作業補助者の仕事です。その際、聞いている会話全てを入力するのではなく、話を要約して簡潔にカルテにまとめていくことが求められます。そのためには専門用語を理解し、話を自分の中でかみ砕いて、わかりやすい言葉でまとめる文章力や国語力が必要になるでしょう。
医師事務作業補助者が扱う書類は、患者さんの情報が記載された紹介状や診断書です。そのため、内容に不備があったり、個人情報に間違いがあったりすると適切な診療ができないばかりか、重大な医療ミスにつながることも考えられます。
医師事務作業補助者には、与えられた業務を丁寧に、そして正確にこなしていくスキルが求められるのです。
令和4年度の診療報酬改定では、医師事務作業補助者の経験年数による配置に係る要件の見直しと評価の充実により、医師事務作業補助体制加算の点数が引き上げられました。医師事務作業補助体制加算の点数引き上げを受けて、今後医師事務作業補助者の役割がどう発展していくのか、期待されることについて具体的にまとめてみました。
医師事務作業補助者は、医療行為は行えません。しかし、医師事務作業補助者は専門的なスキルや知識が求められるため、職域においての専門性は高いといえます。医師事務作業補助者の業務である診断書や紹介状の作成は、医学的な専門用語、各疾患の専門知識などが必要になるため、事前研修や実務経験などで積極的にスキルアップしていくことが求められます。将来的には、このような専門性を活かし、医師事務作業補助者がさらに高度な業務を担う可能性も考えられます。
医師事務作業補助者は、カルテの代行入力や書類作成以外の仕事も増えてきています。その一つとして、「院内がん登録」が挙げられます。地域がん診療連携拠点病院に指定されている病院では独自に「がん登録チーム」を設けるなど、医師事務作業補助者の業務の幅が広がりつつあります。このような、高レベルの医師業務の対応も今後増えていくことが予想されます。
医師事務作業補助者が病棟や外来にも出ていくことで、診療側とマネジメント側の事務とをつなぐ架け橋役としての期待も高まっています。これまでは、事務と診療側それぞれにおける問題点や改善点を客観的に見ることができず、埋もれてしまいがちでした。医師事務作業補助者が、事務側と診療側を行き来することで、これまで気づかなかった問題点や改善点が見えやすいというメリットが得られます。いわゆる診療現場の架け橋役としても、その立場がさらに重要になるでしょう。
医師事務作業補助者について、仕事内容やメリット、求められるスキル、今後の発展などを紹介しました。医師事務作業補助者は誰でも目指すことができ、今後の将来性も高い仕事です。安定している医療機関で働きたい、将来性のある仕事に就きたいと思っている方は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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