医師事務作業補助者とは?仕事内容や給料、おすすめの資格について解説
2023.05.22 医療事務
【医療事務のパイオニアソラスト監修】医療機関では、医師が診療を行った際、その内容を記したカルテを作成することが義務付けられています。それに関連する事務作業をサポートする役割を担っているのが「医師事務作業補助者」です。
主な仕事内容は、電子カルテの入力、診断書や紹介状の作成、検査データの管理など、医師の事務作業を補助する役割を担っています。医師事務作業補助者は、医療現場での円滑な業務運営に貢献し、患者さんへのサポートや医療スタッフとの連携を図るたいへんやりがいのある職種です。
この記事では、仕事内容や必要な研修、給料やおすすめの資格など、医師事務作業補助者について詳しく解説します。
医師事務作業補助者(医療クラーク)とは?
医師事務作業補助者は、「医療クラーク」とも呼ばれ、カルテ入力や診断書、紹介状作成など、医師の指示のもとで医師の事務作業を補助したり代わりに行ったりする職種のことです。医師事務作業補助者は主に総合病院や大学病院といった規模の大きな医療機関に在籍しています。
高齢化が進み、ますます医療の質の向上や医師の負担軽減などが求められているなかで、医師事務作業補助者の需要は高まっています。
医師事務作業補助者(医療クラーク)と医療事務との違いについて
医師事務作業補助者の仕事は医師の事務作業のサポートを行います。
医師とのやりとりが中心で、ナースステーションや診療室で勤務することが多いです。
医療行為は行わないため、未経験・無資格でも働くことができます。医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク®)などの民間資格を取得している人もいます。
それに対して医療事務の仕事は、主に窓口で患者さんとやりとりをしながら窓口業務やレセプト業務などを行います。医療事務作業補助者と同じで、未経験・無資格で働くことができます。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)などの民間資格を取得している人が多いです。
あわせて読みたい記事:医療事務とは?仕事内容や給料、メリット・デメリットについて徹底解説
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2008年からスタート!医師事務作業補助体制加算とは
医師事務作業補助者の仕事が注目されるようになった理由に、医師事務作業補助体制加算があります。これは2008年に行われた診療報酬改定で創設された診療報酬改定のひとつです。
医師の負担を減らして医療の質を高めることが大きな目的になります。
この医師事務作業補助体制加算ができたことで、一定の基準を満たしていれば算定ができるようになり、医師事務作業補助者の人件費が国から補助されるようになりました。
年々、このスコアは上がり、医師事務作業補助者を採用する医療機関がどんどん増えてきています。
医師事務作業補助者の仕事内容
医師事務作業補助者の仕事は主に5つに分けられます。
- ・医療文書作成代行
- ・医療記録(カルテ)入力の代行
- ・診療情報の管理・整理
- ・行政への対応
- ・学会・カンファレンスの準備
では具体的にどのような業務を行うのか、ここからは医師事務作業補助者の仕事内容について解説します。
医療文書作成代行
医師の指示に従い、医療文書作成を代行します。
主に、診断書・紹介状・各種保険の証明書・入院手続き関連書類・退院サマリー・処方箋など多くの種類の文書を作成します。
どの書類も患者さんにとって重要なものであり、様式の指定もさまざまあるので、毎回同じように作成できません。ミスのないように細かい注意を払う必要があります。
医療記録(カルテ)入力の代行
医師と一緒に診察室へ入り、医師と患者さんの診察内容を聞きながら医療記録(カルテ)の入力を代行します。
近年は電子カルテが多く、パソコンを使って診療内容や検査、処方について入力を行います。専門的な知識が必要になる場面でもあり、やりがいを大きく感じられる業務のひとつです。
診療情報の管理・整理
患者さんのカルテやレントゲン・CT検査などの画像データ、血液検査の結果などを管理したり整理したりすることも医師事務作業補助者の業務です。
そのほかに、病院運営に関する資料やメールの整理なども行います。
行政への対応
行政が管轄する緊急医療情報システムや感染症についての情報をオンラインで共有する感染症サーベイランスシステムの入力を行います。
厚生労働省などへ報告する診療データをまとめるといった仕事も行います。
学会・カンファレンスの準備
学会やカンファレンスで使用するために、院内のがん登録の統計をとったり、治療・診察のデータをまとめたりして資料を作成するのも医師事務作業補助者の重要な役割です。
医師事務作業補助者がやってはいけない業務
医師事務作業補助者は、医師の指示を受けて業務を行います。
そのため、医師以外から指示された業務は行うことができません。
厚生労働省が定めた施設基準によって、禁止業務が定められています。
- ・受付・窓口業務
- ・診療報酬(レセプト)の請求業務
- ・運営や経営のためのデータ収集
- ・医療機関の運営
- ・看護業務の補助
- ・物品の運搬
参考:厚生労働省 医師事務作業補助体制加算について
医師事務作業補助者の給料相場(年収・月給・時給)
大手求人サイトの統計によると、医師事務作業補助者の年収は約312万円でした。
民間資格などを取得することによって資格手当がつく場合もあり、年収アップが見込めます。
ただし、あくまで平均です。地域によっても変動するため、希望する勤務地で事前に求人要項を確認しておきましょう。
医師事務作業補助者になるには資格が必要?
医師事務作業補助者は、資格がなくても働くことができます。
しかし、医師事務作業補助者に関する民間資格はいくつかあり、それを取得しておくと就職に有利になったり、資格手当がもらえたりする場合も多いので、取得しておくことをおすすめします。
32時間以上の基礎研修と6ヶ月の職場研修を受講する
医師事務作業補助者になるためには資格は必要ありませんが、入職後6ヶ月間は研修期間であり、その期間中に厚生労働省が定める32時間以上の基礎研修を受けなければなりません。
この基礎研修では、以下の内容を主に学びます。
- ・医師法・医療法・薬事法・健康保険法などの法律について
- ・個人情報の保護について
- ・医療機関で提供される一般的な医療内容や用語などについて
- ・診療録などの記載、管理、代行入力について
- ・電子カルテシステムについて
※参考:厚生労働省参考資料より
研修にて基本的な知識を身につけることができるため、資格や経験がなくても募集・採用している医療機関も多くあります。
32時間以上の基礎研修が免除される対象者
- ・医師事務作業補助者が新たに配置される前に基礎知識の習得に係る研修を受けている方
- ・日本医師会認定医療秘書資格取得者
6ヶ月の研修期間は医療機関に入職した後に必ず受けなければなりませんが、32時間以上の基礎研修に関しては、上記の条件であれば免除の対象者となります。
医師事務作業補助者の資格を取得するメリット
医師事務作業補助者になるためには資格は必要ありませんが、資格があると就職や転職の際に有利になります。資格をとることで昇進や昇給がある医療機関もあり、資格をとって損することはありません。
今後ますます需要が高まると予想される職種ですので将来性もあります。
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就職や転職に有利
どの仕事においても、未経験や無資格者よりも経験者や有資格者の方が就職や転職の際に有利となりやすいでしょう。医療事務は資格がなくても働くことができますが、倍率の高い職場への就職を考えている場合は、医師事務作業補助者の資格を取得しておいて損はないでしょう。
将来性がある
先述した通り、2008年の診療報酬改定にて「医師事務作業補助体制加算」が新設され、医療現場において医師事務作業補助者の需要は年々高まっている傾向にあります。質の高い医療を提供していくために、医師の業務サポートを担う医師事務作業補助者の活躍する場所は、今後も増えていくことでしょう。
スキルアップ
医師事務作業補助者になることで、医療の専門的な知識を身につけることができます。無資格でも働けるとはいえ、医師の業務サポートを担うためには専門的な知識を求められる場面も少なくありません。医師事務作業補助者の資格を取得することによって、自身のスキルアップに繋がり、活躍の場を広げることができるでしょう。
医師事務作業補助者に有利な資格
ここからは医師事務作業補助者に有利な資格をご紹介していきます。
医師事務作業補助者検定試験(ドクターズオフィスワークアシスト®)
医師事務作業補助者検定試験は、技能認定振興協会(JSMA)が主催する民間資格です。試験内容は学科と実技に分かれ、どちらもマークシート形式で出題されます。在宅で受験することができ、合格後には、「ドクターズオフィスワークアシスト®」の認定合格証が交付されます。
公式HPでは合格率は約60%ですが、技能認定振興協会(JSMA) の試験実績では2022年5月から2023年1月の実績は90%を超えています。
合格しやすい試験といえるでしょう。
医師事務作業補助者(ドクターズオフィスワークアシスト)検定試験 | JSMA 技能認定振興協会
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医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク®)
医師事務作業補助技能認定試験は、日本医療教育財団が主催する民間資格です。
受験するには以下の3つ条件のうち、少なくとも1つを満たしている必要があります。
1.教育機関等が行う教育訓練のうち、認定委員会が認定規程により定める「医師事務作業補助技能認定試験受験資格に関する教育訓練ガイドライン」に適合すると認めるものを履修した者。
2.医療機関等において医師事務作業補助職として6ヵ月以上(32時間以上の基礎知識習得研修を含む)の実務経験を有する者 ※実務経験証明書の提出が必要となります。
3.認定委員会が前各号と同等と認める者。
引用:医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク®)
医師事務作業補助技能認定試験(ドクターズクラーク®)|一般財団法人日本医療教育財団・公益社団法人全日本病院協会
医師事務作業補助者実務能力認定試験
医師事務作業補助者実務能力認定試験は、全国医療福祉教育協会が主催する民間資格です。マークシート形式の学科問題と、書類を作成する実技問題の2つに分かれて出題されます。
特に称号はありません。
医師事務作業補助者実務能力認定試験|全国医療福祉教育協会
医師事務作業補助者はきつい?やりがいはある?
医療事務作業補助者がきついと感じるときとやりがいを感じるときはどんなときでしょうか。ここからそれぞれについて解説していきます。
医療事務作業補助者がきついと感じるとき
医師事務作業補助者は、医師はもちろん、看護師や検査技師・医療事務・患者さんなどさまざまな人と関わりながら仕事を行います。それゆえに連携がうまくいかずに仕事が滞ったり、クレームを受けたりしてしまうこともあり、きついと感じてしまうことがあるようです。
事務作業だけでなく人とのコミュニケーションが好きな人やコミュニケーションスキルをアップさせたい人に向いている仕事と言えるでしょう。
また、同じポジションの人数が少なく仕事を任せてもらえる一方で、ミスが許されない責任感や孤独感も感じやすいです。責任感を糧にしてやりがいに変えられたり、周りに上手に頼ることができたりする人であればきついと感じることは少なくなるでしょう。
最初はうまくいかなくても経験を積むにつれ、自分のスキルも上がってきついと感じていたことも克服できるようになります。
やりがいを感じるとき
医師のサポート役として、医師事務作業補助者にとっての1番のやりがいは、医師から信頼を得て仕事を任されたり、「ありがとう」と感謝の言葉をかけてもらうことです。
医師や目の前にいる患者さんなど、人のために自分ができることは何かを考えて働くことがやりがいに繋がり、自分自身の成長にもなります。
まとめ:医師事務作業補助者は医師のサポート役!より良い診療を患者さんへ提供しよう
医師事務作業補助者は裏方ではありますが、医師をサポートすることで患者さんを間接的に支える重要な仕事です。
今後も需要が増えていく将来性のある仕事で、医療機関にとって欠かせない存在になりつつあります。ぜひ資格を取得してより良い医療を患者さんへ提供してはいかがでしょうか。