
介護事務とは?仕事内容や資格取得などについて徹底解説
2022.03.29 介護事務
今後、さらに少子高齢化が進んでいくなかで、介護業界の仕事に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。介護業界の仕事の一つに、介護事務という職種があります。介護事務はその名の通り、介護に関する事業所で事務作業を行うのが主な仕事内容です。今回は、介護事務における仕事内容や資格取得などについて徹底的に解説します。
2022.03.29 介護事務
今後、さらに少子高齢化が進んでいくなかで、介護業界の仕事に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。介護業界の仕事の一つに、介護事務という職種があります。介護事務はその名の通り、介護に関する事業所で事務作業を行うのが主な仕事内容です。今回は、介護事務における仕事内容や資格取得などについて徹底的に解説します。
日本で介護保険の制度が開始されたのは、2000年に介護保険法が制定されてからです。この制度により、介護施設で介護報酬の計算が必要となったことがきっかけで、介護事務の仕事が注目されはじめました。
介護事務は、介護サービスを提供する事業所において、事務作業を行う職種を指します。主に介護報酬請求業務や受付窓口業務、全体の管理業務などを行い、事業所の業務が円滑に進むように縁の下の力持ちのような役割を果たすのが特徴です。
働く事業所によって仕事内容は異なり、ケアマネジャーのサポートについたり、職員の労務管理などを行ったりする場合もあります。
介護事務の主な仕事内容についてみていきましょう。
事業所を訪れる方への応対や電話対応といった窓口業務は、基本的に介護事務スタッフが担当します。対応するのは医療関係者から一般の方までさまざまですが、必要に応じて担当者に取り次いだり、自分で対処したりと、臨機応変な対応が求められます。
事業所によっては職員の勤怠を管理し、給与計算や勤務日数の管理などを行うのも介護事務の仕事です。事業所によっては、施設長や管理者の指示のもとで労務管理を行い、労働条件通知書の作成や各種保険手続きなどを行う場合もあります。
事務用品や施設で使う介護用品など、備品の在庫管理や発注を行うのも介護事務の仕事です。特に介護用品の在庫が切れていると、サービスを受ける利用者さんの不利益にも直結してしまうため、見落としがないように管理することが求められます。
また、設備が破損した場合の専門業者への修繕依頼なども介護事務の仕事です。現場の職員や管理者と意見交換をしながら対策を講じていきます。
介護報酬請求とは、国民健康保険団体連合会(国保連合会)に毎月請求書を提出して、国保連合会から介護報酬をもらうための業務のことをいいます。介護報酬請求業務は、事業所の収益に直結するため、介護事務にとって最も重要な業務であるといえます。
介護サービスの利用料は、7〜9割を介護サービスの運営主体(全国の各自治体)の保険料や税金で賄われ、残りの1〜3割を利用者が自己負担する形で成り立っています。事業所がサービス利用料を得るためには、月末までに利用者ごとのサービス利用日数や内容を精査して「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」を作成しなければなりません。(居宅介護支援事業所では「給付管理票」と「居宅介護支援介護給付費明細書」を作成します。)介護事務スタッフが作成した書類を、翌月の10日までに国保連合会へ提出することで事業所へ報酬が支払われる仕組みとなっているのです。
介護報酬請求業務によって割り出された金額をもとに請求書を作成することも、介護事務の仕事です。請求書は郵送、または直接本人に渡す形で届けられます。
※介護事務の給料事情
厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、介護事務職員の平均基本給額は20.8万円とされています。職場によっては、勤続年数や資格の有無などで優遇されることもあるようです。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/19/dl/30kekka.pdf
介護事務として活躍できる場所は、介護保険に関わる施設や事業所全般となります。それぞれの職場によって、仕事内容や1日の流れは大きく異なるので、自分に合った職場を選ぶことが大切です。介護事務として働くことができる主な就職先の特徴についてみていきましょう。
有料老人ホームは、高齢者の心身の健康を維持するために必要な食事、介護、家事、健康管理のうち、いずれか一つ以上のサービスを提供している施設のことをいいます。有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」といった種類があり、それぞれ受けられるサービスが異なります。
施設によっては、介護事務も簡単な介護の補助や利用者の付き添いなどを行う場合もあります。
訪問介護ステーションは、介護を必要としている人の自宅に直接訪問して、入浴・排泄・食事などの介護、調理・洗濯・掃除などの家事を提供するヘルパーが所属している事業所のことを指します。訪問看護と違い、医療的なケアではなく、ヘルパーが日常生活の支援のみを行うのが特徴です。
訪問看護ステーションは、居宅で継続した療養を必要としている人に対し、看護師や理学療法士といったセラピストが自宅へ訪問して医療的なケアを提供する事業所です。医療的なケアが含まれるので、利用者がサービスを受けるには医師からの「訪問看護指示書」が必要となります。
介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立を支援して、在宅復帰を目指していく施設です。病院での入院を終えてから、自宅に戻るまでの期間にリハビリを行うために利用されることが多くなっています。
自宅で生活を送ることが困難な要介護者の生活支援全般を行う施設です。利用者は常に介護が必要な状態であり、自宅での介護が困難な高齢者なので、24時間体制の介護となっています。
デイサービスは「通所介護」とも呼ばれ、利用者が日帰りで入浴、食事、排泄などの介護サービスを受ける施設をいいます。介護だけではなく、レクリエーションや介護予防の機能訓練なども行っている施設も多くなっています。
介護事務として働くためには、介護保険制度に関する知識やスキルを身につけることが必要です。基本的に介護事務スタッフが働く職場は、介護保険サービスを提供している施設・事業所です。サービスを利用する高齢者やそのご家族は、介護保険制度についてあまり知らない方も多いので、相談を受けた際には身につけた知識やスキルを活かして、活躍することができるでしょう。
また、人間は誰もが年齢を重ねて老いていくので、いずれ家族の介護に直面したり、自分自身も介護が必要になったりすることが考えられます。そのため、仕事の場面ではなく、自分の身の回りで介護保険サービスに関する知識が求められることも十分に想定されます。そんな時に、介護事務で養った知識やスキルがあれば、家族や自分のために役立てることも可能です。
介護事務として働くために、必ずしも資格は必要ではありません。資格がなくても、一定の専門知識とスキルがあれば介護事務として働くことは可能です。
介護事務として働くために、求められるスキルは以下の4つが挙げられます。
介護事務にとって欠かせないのは、介護報酬請求業務(レセプト作成・点検)です。事業所の収益にも関わる重要な業務であるため、レセプトの作成・点検方法や介護保険制度に関する知識はある程度知っておいたほうがよいでしょう。未経験者でも業務をしながら徐々に覚えていくことも可能ですが、専門的な分野にもなるため、なんらかの資格を持っていたほうが有利かもしれません。
レセプト作成・点検はもちろん、窓口会計や利用者情報の入力をする際に、パソコン作業は欠かせません。そのため、ワードやエクセルの基本的な操作は知っておくことが必要です。また、ブラインドタッチとまではいかなくても、ある程度の速さでタイピングできたほうが、仕事がスムーズに進められるでしょう。
介護事務スタッフは、同施設の他職種はもちろん、利用者やそのご家族、ケアマネジャーや福祉用具レンタル会社の担当者、連携先の医療機関のスタッフなどと関わりながら業務をしていきます。時には自分で判断してその場で対応しなければならないこともあります。そのため、適切なコミュニケーションがとれて、臨機応変に対応できる能力が必要です。
介護事務として働く際に資格取得は必須ではありませんが、資格を取得しておくと仕事もスムーズに進めることができます。介護事務の資格にはいくつか種類がありますので、おすすめの資格を紹介します。
介護事務管理士®技能認定試験は、技能認定振興協会(JSMA)が主催しています。2000年に日本初の介護事務の資格試験としてスタートし、非常に認知度の高い資格です。この資格を取得することで、介護サービス事業所で働く上で必要な介護報酬請求業務や受付窓口業務などの知識・スキルを証明することができます。
資格試験は年12回(毎月)実施され、学科は法規・介護請求事務の知識に関して択一式マークシート、実技はレセプト点検をするために必要な技能を問うもので、大問2題を選択して解答可能となっています。学科・実技ともに60%以上の得点で、かつ全問題の得点合計が80%以上で合格となります。合格率は70%程度と高いため、介護事務に初挑戦する方にもおすすめの資格試験です。
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ケアクラーク®技能認定試験は、一般財団法人 日本医療教育財団が主催している民間資格です。取得することで、介護報酬請求事務や社会福祉制度などの知識やスキルを証明することができます。試験は年3回実施され、学科は介護事務知識に関する筆記問題、実技では、介護報酬請求事務・介護給付費明細書作成を行います。学科・実技ともに70%以上の得点率で合格となります。
介護報酬請求事務技能検定試験は、日本医療事務協会が主催しています。取得することで介護報酬請求事務を行う知識と技能を証明することができます。試験は偶数月に実施されており、学科試験に加え、実技試験では居宅サービスと施設サービスそれぞれにおける介護給付費明細書の作成を行います。問題の総得点の70%程度を基準とし、問題の難易度で補正した点数以上をとることで合格となります。
介護保険事務士認定試験は、一般財団法人 つしま医療福祉研究財団が主催している、介護保険請求事務のエキスパートであることを証明する民間資格です。介護系の大学や短大でも履修科目として取り入れられており、団体認定校の履修科目を修了した学生が受験対象者です。学科試験は介護保険制度の知識、実務試験は介護レセプト問題で構成されており、合格判定の基準は基礎・実務試験が合計で60点以上の得点となっています。
介護事務実務士®は、医療福祉やメンタルケアに関する知識やスキルを証明できる民間資格です。取得するには、特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会(MEDIN)が開催する「介護情報実務能力認定試験」に合格するか、MEDINの教育指定校の講義を修了する必要があります。学科は介護保険法やその他の関連法規、介護保険制度、介護報酬の請求の3分野から構成され、実技は介護給付明細書の作成です。合格基準は偏差値55以上であるか全体の8割以上の得点となっています。
介護保険事務管理士®は、一般財団法人 日本病院管理教育協会が認定している民間資格です。取得することで、医療や介護サービスを提供する施設にて介護報酬請求業務を行える能力を証明することができます。取得するには、財団が指定した教育指定校にて介護事務に必要な知識を養い、その後に資格認定試験に合格することが必要です。
介事管理専門秘書検定資格は、一般財団法人 日本能力開発推進協会が主催している民間資格です。介護報酬請求の技能や介護福祉制度・メンタルケアの知識などの能力を証明することができます。試験は認定教育機関等のカリキュラム修了後、在宅で受験することが可能です。履修内容は介護保険制度や介護報酬請求、介護に関する知識、メンタルケアなどから構成されています。
ここからは、介護事務の資格を取得しておくと得られるメリットについて紹介します。
介護事務の主要な業務である、介護報酬請求業務は介護保険制度の知識が必要です。そのため、資格を取得しておくことで即戦力になれるというアピールにもつながり、就職や転職に有利になる可能性もあります。また、介護事務はケアマネジャーや介護士が兼任している事業所も多いため、あらかじめ資格を取得しておくことで、就職先の選択肢を広げることもできるでしょう。ただ、介護事務の求人はそれほど多くない傾向にあるため、介護事務単体のスキルで就職を目指すというよりも、今の仕事の幅を広げる一環として資格を取得するケースのほうが多いといわれています。
資格取得のための勉強をしているうちに、介護保険の知識が身についていきます。介護保険制度に関する知識をしっかりと身につけておけば、利用者さんやご家族に質問された際にもスムーズに対応することができるでしょう。また、職業としてではなく、将来自分の家族や自分自身が介護保険サービスを利用する際に役立つ知識として身につけておくことで、大きな安心材料になるでしょう。
介護業界では介護士をはじめ、看護師や理学療法士といったさまざまな職種の人が働いています。これらの職種の人でも、介護事務の資格を取得しておけば、ケアマネジャーなどほかの資格を目指す際の足掛かりになり、ステップアップにも繋がります。特に病院から介護業界に転職したばかりで、介護保険についてよく知らない・詳しくなりたいという人にとってはよい学びになるでしょう。
我が国は高齢化社会の真っ只中であり、今後も65歳以上の高齢者が増えていくことが予測されています。そのため、介護を受ける人が増えていくことに伴い、介護業界における人手の需要は今後も高まっていくことが考えられます。
実際に介護サービス利用者の数、介護サービス提供事業所数も年々増加している現状があります。
まだ介護事務という職種の認知度はそれほど高くない状況ではありますが、介護サービス利用者が増えれば増えるほど事務作業も増えていくので、今後も介護事務の知識とスキルが求められる場面は多いでしょう。
介護事務の仕事に向いている人の特徴として、
・介護業界に興味がある人
・コミュニケーション能力の高い人
・高齢者に理解がある人
・デスクワークが苦ではない人
といったことが挙げられます。これらを見てもそこまでハードルが高い職種ではないので、比較的チャレンジしやすいといえるでしょう。
介護事務における、仕事内容や活躍する場所、資格取得について紹介しました。介護事務の仕事は幅広い知識と対応力が求められますが、その分やりがいもあり、介護現場のスタッフがスムーズに仕事をするためにもなくてはならない存在です。
何よりも将来役立つ知識の勉強として、興味のある方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
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