介護事務の仕事内容は?資格や必要なスキル、給料相場についても解説
2023.09.11 介護事務
【医療事務のパイオニアソラスト監修】少子高齢化が進んでいくなかで、介護業界の仕事に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。
そんな介護業界の仕事の一つに、介護事務という職種があります。
介護事務はその名の通り、介護に関する事業所で事務作業を行うのが主な仕事内容です。
今回は、介護事務の仕事内容や1日の流れ、気になる平均給料や必要なスキル、おすすめの資格などについて徹底的にわかりやすく解説します。
介護事務とはどんな仕事?
介護事務とは、老人ホームや訪問介護ステーションなど、介護サービスを提供する事業所で事務作業を行う職種のことを指します。
介護報酬請求に関する書類作成などの事務作業から、窓口や電話の対応や備品の管理や修繕まで、幅広いスキルが求められる仕事です。
職場によっては、ケアマネジャーのサポートや職員の勤怠管理を担当することもあります。
介護事務は未経験からでも挑戦できますが、資格を持っていると就職・転職の際にスキルの証明になるのでおすすめです。中でも介護報酬請求業務(レセプト作成)は介護事務の大切な仕事であり、専門的な知識が求められます。
あわせて読みたい記事:医療事務に欠かせないレセプト業務とは?初心者におすすめの勉強方法は?
介護事務の仕事内容
介護事務の主な仕事内容を詳しくまとめてみました。
窓口業務(電話対応・来客者対応・会計)
事業所を訪れる方の受付対応や、電話対応などの窓口対応は、基本的に介護事務スタッフが行います。
デスクワークだけでなく、人と関わる機会が多いのも介護事務の特徴です。
対応する相手は一般の面会者から医療関係者までさまざまです。自分で対処したり、必要に応じて他のスタッフへと引き継いだりと、臨機応変な対応が必要になります。
備品の管理や修繕
事務用品や介護用品など、業務で必要な備品の在庫管理や発注を行います。特に介護用品の在庫切れはサービス利用者の不利益にも直結するため、日々の細かい気配りが大切です。
その他に設備が破損した場合には、業者に修理の依頼をすることもあります。
管理業務(職員の勤怠管理・労務管理)
事業所によっては、職員の勤怠管理やシフト管理、給料計算、勤務日数の管理を介護事務スタッフが行う場合もあります。
また、労働条件通知書の作成や、各種保険の手続きを任されることもあるでしょう。
利用者への請求書作成
介護報酬請求事務によって割り出された金額を元に、利用者が自己負担するサービス料を請求する作業です。
請求書を作成して、郵送したり直接手渡したりするなどして本人に届けます。
介護報酬請求業務(レセプト作成・点検)
介護報酬請求業務(レセプト作成・点検)とは、介護保険によって利用者の自己負担にならなかった分のサービス利用料金を国に請求する業務です。
介護サービスは、一般的に利用者が1〜3割の利用料を自己負担し、残りを国の介護保険で賄う形で成り立っています。
事業所がサービス利用料を得るためには、毎月の介護報酬請求業務が欠かせません。
具体的には、サービス利用内容や日数を利用者ごとに精査して、「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」を作成する必要があります。
※居宅介護支援事業所では「給付管理票」と「居宅介護支援介護給付費明細書」を作成します。
上記の書類を作成の上、翌月10日までに国保連合会へ提出します。この書類作成や申請作業を行うのが介護事務スタッフです。
毎月の介護報酬請求業務は、事業所の利益にも直接繋がるため、とても大切な業務だといえます。
ケアマネジャーのサポート
ケアマネジャーは、介護サービス利用者に対してケアプランを作成したり、介護施設と利用者をつなぎ合わせる調整役となる職業です。
介護事務はそのケアマネジャーのサポートを任される場合もあります。
具体的なサポート内容は事業所によって異なるため、気になる方は面接の際に確認されると良いでしょう。
介護事務の1日の流れ
9:00 始業
朝礼に参加したら、その日のスケジュール確認をして1日の準備を行います。
事業所全体がスムーズに業務進行できるように、朝のうちにスケジュールの把握をしておくことが重要です。
10:00 午前の業務開始
レセプト作成などの事務作業をしつつ、電話や窓口への来客があれば対応します。業務内容はその日によって様々です。備品の確認・修繕などを行ったり、ケアマネジャーのサポートを行ったりする場合もあります。
12:00 昼休み
お昼休みになったら順番に休憩をとります。
13:00 午後の業務開始
午前中に引き続き、事務作業や窓口対応、備品の管理や発注などを行います。
18:00 勤務終了
1日の終わりにはその日のサービスの実績集計や翌日のスタッフの勤怠管理、備品のストックなど、翌日の準備をしてその日の業務を終了します。
介護事務は残業が多い?
介護事務の仕事は基本的に残業はありません。
しかしレセプト作成は月末締め・翌月10日までに完了する必要があるため、月初め〜介護報酬請求業務がある10日までは残業が発生することもあります。
介護事務の給料について(年収・月給・時給)
正社員の場合
月給は約28万円、年収は約341万円が平均的な給料だといわれていますが、全体で見ると270〜720万円ほどと、勤務先やスキルによって大きな幅があります。
実際は年収270〜327万円ほどをもらっている方が多いようです。
パートやアルバイト、派遣社員の場合
パートやアルバイト、派遣社員の場合、平均時給は1,052円、1,268円ほどだといわれています。
介護事務に必要な知識・スキル
介護事務として働くために資格は必須ではありませんが、様々なスキルが求められる仕事です。その中でも特に重要とされるスキルを3つご紹介します。
介護保険に関する知識
介護事務として欠かせないのが、介護報酬請求業務(レセプト作成・点検)に関する知識とスキルです。
事業所の利益に直接関わる重要な業務なので、初めて働く場合もある程度知識を持っていると早く仕事に慣れることができるでしょう。
介護報酬請求業務に関する知識は、介護事務の資格取得の勉強を通して身につけられます。
おすすめの資格は介護事務管理士®の資格です。
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コミュニケーション能力
窓口業務もこなす介護事務は、対人コミュニケーションスキルも求められる仕事です。同じ施設で働く他のスタッフはもちろん、施設の利用者や連携先の医療スタッフなど、様々な業種の方と関わることがあるでしょう。
その場にあった対応が臨機応変にとれるような、高い対応力が求められます。
介護事務に資格は必要ない?
介護事務として働く上で、資格は必ずしも必要ではありません。
しかし介護保険に関わる業務があるため、専門知識や専門的なスキルは必ず身につける必要があります。資格がいらない分、目指す方も多い仕事なので、資格を保有して自分のスキルを証明できると、就職や転職の際に大きなメリットになります。
介護事務の資格を取得するメリット
介護事務の資格を保有していると、以下のようなメリットがあります。
- ・就職や転職に有利
- ・介護保険に関する専門知識が身につく
- ・介護業界でのキャリアアップに繋がる
介護事務の仕事の中でも、特に介護報酬請求業務では専門知識が求められるため、資格を持っていることはスキルの証明になるので大きなメリットになります。
しかし資格取得のためには勉強するための時間や、お金もかかるところがデメリットです。
とはいえ介護事務の資格は、ケアマネジャーなど他の資格を目指す際の足がかりとしても役立ちます。
介護業界で長期的にキャリアアップを狙いたい方は、介護事務の資格を持っておいて損はないでしょう。
介護事務のおすすめ資格7選を合格率もあわせて紹介
資格名 | 運営団体 | 合格率 | 主な講座 |
---|
介護事務管理士® | 技能認定振興協会(JSMA) | 約70% | ソラスト、ユーキャン |
ケアクラーク® | 一般財団法人 日本医療教育財団 | 約70% | ニチイ、各専門学校 |
介護報酬請求事務技能検定 | 日本医療事務協会 | 約80% | 日本医療事務協会 |
介護保険事務士® | 一般財団法人 つしま医療福祉研究財団 | 非公開 | 認定の教育機関 |
介護事務実務士® | 特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会(MEDIN) | 約70% | キャリアカレッジジャパン |
介護保険事務管理士® | 一般財団法人 日本病院管理教育協会 | 非公開 | 認定の教育機関 |
介事管理専門秘書検定資格 | 一般財団法人 日本能力開発推進協会 | 非公開 | 認定の教育機関 |
当社調べ
介護事務として働く際に資格取得は必須ではありませんが、資格を取得しておくと仕事もスムーズに進めることができます。介護事務の資格にはいくつか種類がありますので、おすすめの資格を紹介します。
介護事務管理士®
介護事務管理士®技能認定試験は、技能認定振興協会(JSMA)が主催する非常に認知度の高い民間資格です。取得することで、介護事務として働く上で必要な介護報酬請求業務や、受付窓口業務などの知識・スキルを証明できます。
試験は毎月実施され、在宅でも受験可能です。試験内容は、法規や介護請求業務に関する学科と、レセプト点検に関する実技が出題されます。学科・実技ともに、60%以上の得点かつ全問題の得点合計が80%以上で合格です。
合格率は平均70%程度と高いため、初めて介護事務に挑戦する方にもおすすめの資格試験だといえるでしょう。
参考:介護事務管理士®技能認定試験|技能認定振興協会(JSMA)
資格を目指すなら、ソラストの「介護事務講座」の教材がおすすめ
介護保険の“しくみとお金”がわかる教材。介護従事者の方のキャリアアップにも、ご自身や家族のためにつながる学びとしてもおすすめ!この講座で目指せる資格「介護事務管理士®️」です。
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ケアクラーク®
ケアクラーク®技能認定試験は、一般財団法人 日本医療教育財団が主催する民間資格です。
取得すると介護報酬請求事務や社会福祉制度などの知識やスキルの証明になります。
試験は年3回(5,9,1月)実施され、在宅でも受験可能です。
試験内容は、学科が介護事務知識に関する筆記問題、実技が介護報酬請求事務・介護給付費明細書作成となります。学科・実技ともに70%以上の得点率で合格です。
参考:ケアクラーク®技能認定試験|一般財団法人 日本医療教育財団
介護報酬請求事務技能検定
介護報酬請求事務技能検定試験は、日本医療事務協会が主催する民間資格です。
取得すると介護報酬請求事務の知識と技能を証明できます。
受験資格があるのは協会が主催している介護事務講座(通信コース)を受講する方のみです。
試験は、会場で受ける場合は偶数月、自宅受験の場合は毎月実施されており、学科試験と、介護給付費明細書を作成する実技試験が出題されます。
参考:介護報酬請求事務技能検定|日本医療事務協会
介護保険事務士®
介護保険事務士認定試験は、一般財団法人つしま医療福祉研究財団が主催する民間資格です。取得すると、介護保険請求事務のエキスパートであることの証明になります。
介護系の大学や短大でも履修科目として取り入れられており、団体認定校の履修科目を修了した学生が試験の受験対象者です。
参考:介護保険事務士®|一般財団法人つしま医療福祉研究財団
介護事務実務士®
介護事務実務士®は、特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会(MEDIN)が主催する民間資格です。取得すると、介護報酬請求事務の従事で求められる一定の能力を持っていることを証明できます。
資格取得のためには、協会が開催する「介護情報実務能力認定試験」に合格するか、MEDINの教育指定校で講義の修了が必要です。
試験内容は介護保険制度などに関する学科と、介護給付費明細書作成の実技が出題されます。合格基準は偏差値55以上、または全体の8割以上の得点率です。
参考:介護事務実務士®|特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会(MEDIN)
介護保険事務管理士®
介護保険事務管理士®は、一般財団法 日本病院管理教育協会が主催する民間資格です。
取得すると、医療や介護サービスを提供する施設で、介護報酬請求業務を行う能力の証明になります。
資格を取得するには、協会が指定した教育指定校で必修科目を履修し、資格認定試験に合格することが必要です。
参考:介護保険事務管理士®|一般財団法 日本病院管理教育協会
介事管理専門秘書検定資格
介事管理専門秘書検定資格は、一般財団法人日本能力開発推進協会が主催する民間資格です。取得すると介護事務としての正しい知識や待遇スキルの証明になります。
試験は認定教育機関等のカリキュラム修了後、在宅での受験が可能です。履修内容は、介護報酬請求や、介護に関する知識、要介護者やその家族、現場スタッフのメンタルケアなどから構成されています。
介事管理専門秘書検定資格|一般財団法人日本能力開発推進協会
介護事務スタッフが活躍する職場
介護事務として活躍できる職場は、介護保険にかかわる施設や事業所全体と幅広いのが特徴です。
仕事の内容や1日の流れは勤務先によって変わるので、自分の生活スタイルに合わせて就職先を選ぶことをおすすめします。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が心身の健康維持をするために必要な食事、介護、家事、健康管理のうち、一つ以上のサービスを行っている施設のことです。
有料老人ホームには「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」など種類があり、受けられるサービスも変わります。
施設の種類によっては、介護事務が介護のサポートや洗濯など身の回りのサポートを行う場合もあるようです。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションは、居宅で継続した療養が必要な方に対して、看護師や理学療法士などのセラピストが自宅へ訪問し、医療的なケアを提供する事業所のことです。
医療的なケアが含まれるため、サービスを受けるには医師からの「訪問看護指示書」が必要となります。
訪問介護ステーション
訪問介護ステーションは、介護が必要な方の自宅にヘルパーが直接訪問して、入浴・排泄・食事などのサポートをしたり、調理・洗濯・掃除などの家事をしたりする事業所を指します。
訪問看護のように医療的なケアではなく、日常生活の支援のみを行うのが特徴です。
デイサービス
デイサービスは「通所介護」とも呼ばれ、利用者が日帰りで入浴、食事、排泄などの介護を受けるための施設を指します。介護サービスだけではなく、レクリエーションや介護予防の機能訓練なども行っている施設も多いようです。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、介護を必要とする高齢者の自立を支援して、在宅復帰を目指すための施設を指します。病院での入院を終えて自宅に戻るまでの期間に、リハビリを行うために利用されることが多いです。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、自宅で生活を送ることが困難な高齢者の生活支援全般を行う施設です。利用者は自宅で介護ができず、常に介護が必要な状態であるため、24時間体制でサポートを行います。
介護事務に向いている人
介護事務の仕事は、こんな方におすすめです。
- ・デスクワークが好きな人
- ・計算や数字が得意な人
- ・コミュニケーションが好きな人
- ・介護業界に興味がある人
パソコン作業が多いので、コツコツとデスクワークをこなすことが好きな方や、計算など数字に関するスキルを活かしたい方にぴったりの仕事です。
窓口対応もあるので、人と関わることが好きな方にも向いています。
反対に、コツコツとした作業が苦手な方や、人とあまり関わらずに働きたい方、責任感を求められるとプレッシャーに感じる方にはあまりおすすめできません。
さらに介護事務は、資格がいらないので未経験からでも目指しやすく、介護事務から介護業界に興味を持ち、ケアマネジャーや介護福祉士としてキャリアアップさせる方が多いのも特徴です。
まとめ:未経験者でも安心!介護事務への道
少子高齢化によって、介護業界の仕事は今後どんどん需要が高まっていくことが期待できます。そんな中でも介護事務は、初心者からでも目指しやすく、専門知識を身につけながらスキルアップが目指せる仕事です。
しかし目指しやすい分、人気の良い施設に介護事務として就職・転職する際は、知識や経験が求められることも少なくありません。
ソラストでは、初心者から介護事務を目指したい方におすすめの「介護事務」の教材をご用意しています。
介護事務として必要な知識を身につけながら「介護事務管理士®」資格取得を目指したい方や、これから介護業界でキャリアをスタートしたいとお考えの方は、ぜひチェックしてみてください。