診療情報管理士とは?仕事内容や資格の取得方法、医療事務との違い

診療情報管理士とは?仕事内容や資格の取得方法、医療事務との違い

2023.05.17 医療事務 その他

【医療事務のパイオニアソラスト監修】診療情報管理士とは、医療機関で患者の診療情報を適切に管理・分析し、医療現場のサポートを行う専門職です。
この記事では、診療情報管理士の仕事内容や資格取得方法について詳しくご紹介します。また、医療事務との違いや、現代の医療業界での診療情報管理士の役割や将来性についても触れていきます。
これからの医療業界で活躍するために、ぜひ診療情報管理士という選択肢を検討してみてください!

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診療情報管理士とは

診療情報管理士は、医療機関における患者さんのカルテや検査記録などの診療情報を点検・管理・収集・分析する専門職です。英語ではHIM(Health Information Manager)と呼ばれています。
患者さんの個人情報を守り、医療機関の経営や医学の研究に役立つデータを集める非常に重要な役割を担う存在です。

医療機関で情報処理を扱う作業を行うため、必ずしも資格が必要なわけではありません。
しかし、専門職であることや就職の際に有利になることからも診療情報資格士の資格を取得しておくことが望まれます。

診療情報管理士と医療事務との違いは?

診療情報管理士も医療事務も、医療機関における事務職のようなイメージがありますが、大きな違いは診療情報管理士がデスクワーク中心であるのに対し、医療事務は窓口業務の中で受付や会計など患者さんと直接接する機会が多いというところです。

この2つの職種は大きな病院では分かれていますが、小規模な場合は兼務する場合もあるようです。

医療事務は未経験でも安心してチャレンジできるので、医療の分野に興味がある人はぜひ目指してみてはいかがでしょうか。不安な人は、まずは医療事務の資格取得からはじめてみるのもおすすめですよ。

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診療情報管理士の仕事内容

診療情報管理士の1日の例です。
勤め先の医療機関によっても異なりますが、診療情報管理士の仕事は、8時から17時までというような一般的な就業時間であることがほとんどです。

主に、医療データを入力・分析するといったパソコンを使うデスクワークと医師とのコミュニケーションが中心になります。

ここから、診療情報管理士の仕事の中でも代表的な、「カルテ管理・データベース化」、「サマリー・点検報告書の作成」、「がん登録」、「DPC業務」について詳しく解説していきます。

カルテ管理・データベース化

患者さんに行われた医療行為や診療内容が記載されたカルテ、検査結果などの内容を精査し、データベースに登録します。これを「ICDコーディング」といいます。

医療機関では、医師が書いたカルテや看護・検査記録などを一定期間保管しておくように法律で定められています。これらの情報を点検・管理したり、診療情報についての開示請求があれば対応したりするのも診療情報管理士の仕事です。

■ICDコーティングとはどんな業務?

ICDコーディングの「ICD」とは、国際疾病分類という国際基準のことです。ICDコーディングとは、カルテに記載された病名をICDに沿ってコード化し、入力していく作業をいいます。コードはアルファベットと数字の組み合わせで、例えば風邪であれば「J00」というコードが使われています。

現在、世界で確認されている病気の数は明確にはわかっていません。病気の数に関する推定値は、10,000種類以上というものや、7,000種類程度という資料もあります。

そんな数ある病名を世界共通のコードによってグループ化することで、疾病の国際比較や情報管理の統一化に活用されています。

サマリー・点検報告書の作成

サマリーとは、英語で「要約」という意味があるように、カルテに記載された患者さんの情報を元に、病歴や治療歴をわかりやすくまとめたものです。

患者さんが院内の別の科に移動する時や、ほかの病院に転院するときなどに円滑に申し送りができるように作成されます。

基本的には医師が作成しますが、診療情報管理士はそのサマリーの最終チェックをします。内容に誤りや不明点があれば、医師に確認を行い修正してもらいます。

同時にこれらの毎月作成されたサマリーをもとに、患者情報の統計をとり、点検報告書も作成して、院長へ提出する業務もあります。

がん登録

がん登録は、2013年に「がん登録等の推進に関する法律(がん登録推進法)」という法律が成立し、医療機関から各都道府県へがん患者の情報を届け出ることが義務付けられたために行われるようになった業務です。

院内がん登録は、外来、入院かかわらず、病院でがんの診療を行ったすべての患者さんのデータを全国共通のルールに従って登録するものです。

患者さんの基本情報や、がんの発見経緯、種類や進行度、治療内容、生存確認情報などを登録していきます。

がん登録で提出する情報は、以下の内容となります。

  • ・がん患者の氏名 ・性別 ・生年月日
  • ・届け出を行った医療機関名
  • ・がんと診断された日
  • ・がんの発見経緯
  • ・がんの種類、進行度
  • ・治療内容
  • ・居住地
  • ・生存確認情報

がん登録を行う際は、個人情報に配慮しながら進めていかなくてはなりません。
そのため、個人情報保護法に基づいて、責任を持ち業務を行っていくことが求められます。

DPC業務

DPCとは「診断群分類別包括評価制度」と呼ばれる方式のことで、多くの病院では「包括医療費支払い制度」とも言われています。そしてDPC業務とは、​​この方式によって医療費の計算を行う業務のことです。

DPCは、一般病棟に​​入院する患者の医療費の支払い制度に適用される評価方法​​であり、従来の「出来高払い方式」とは異なり、入院期​​間中に治療した病気の中で最も医療資源を投入した一疾​​患を対象に厚生労働省が定めた1日当たりの定額の点と​​手術や投薬・注射・検査・処置などの診療行為を包括評​​価方式で計算することで、医療費の適正化を図ることを​​目的としています

医療費を診療行為ごとに計算(出来高方式)するのではなく、病名や症状によって厚生労働省が定めた1日あたりの一定額を基本に医療費を計算していきます。カルテから適切な分類を行い、患者さんのデータを会計担当に提出する業務です。

DPC業務には、​​診療記録の管理や診療情報の分析なども含まれます。

診療情報管理士の給料相場

出典:求人ボックス

大手求人サイトの統計によると、診療報酬管理士の平均月給は約22万円、平均年収は約289万円でした

また、時給は1000円〜1300円台で募集があり、働く都道府県や正社員かパートタイムかといった雇用形態、勤務先によっても報酬の幅があるようです。正社員であれば年次が上がると給料も上がり、ボーナスなどの報酬がもらえます。

診療情報管理士になるには

診療情報管理士は、高い医療情報スキルが求められます。正確に仕事をこなせるように、正しい知識を身に付けることが重要です。

就職で有利になるという目的だけではなく、正確に仕事をこなせるように、きちんと知識を身につけた上で民間資格の診療情報管理士の認定試験に合格しておいた方がいいでしょう。

診療情報管理士認定試験の概要

診療情報管理士認定試験は一般社団法人日本病院会によって年1回2月に実施されています。
受験料は10,000円、認定料が30,000円です。

全国15会場で行われ、試験内容は基礎分野と専門分野で構成されており、日本病院会の通信教育のテキストや練習問題から出題されます。マークシート方式での解答です。
合格発表はメールにて発表があります。

■受験資格の取得方法

診療情報管理士認定試験を受験するためには、あらかじめ定められた条件を満たしている必要があります。

受験資格は以下の2通りです。

  • ・一般社団法人日本病院会が認定する大学・専門学校に通いカリキュラムを修了すること
  • ・一般社団法人日本病院会が実施する2年間の通信教育を修了すること

なお、通信教育を受講する場合は以下の条件を満たしている必要があります。

  • ・原則として2年制以上の短期大学または専門学校卒以上の学歴を有する者
  • ・現在、病院に勤務している者は、当分の間、高卒者でもよい

また、通信教育の修業期間として基礎課程1年、専門課程1年で計2年と定められていますが、以下の資格を有している場合は専門課程への編入が可能であり、基礎課程の試験が免除となります。
よって通信教育は1年で修了することができます。

受講料は2年間で220,000円(税込)(専門課程編入は110,000円)です。
※半期延長料(半年)は別途。

医師・歯科医師・看護師・薬剤師・診療放射線技師・臨床検査技師・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・言語聴覚士・歯科衛生士・歯科技工士・臨床工学技士・義肢装具士・救急救命士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師

参考:診療情報管理士|一般社団法人日本病院会

診療情報管理士認定試験の難易度や合格率

2022年の試験では受験者数2625人に対して合格者が1750人で合格率は66.7%でした。

すでに国家資格を持っていたり、通信講座を受講してきちんと学習してきたりした人たちだけが受験できる試験としては合格率は低く、難易度は比較的高いといえるでしょう。

働きながら診療情報管理士の資格は取得できる?

診療情報管理士の試験を受験するには一般社団法人日本病院会の通信講座を受講する必要があります。しかし繰り返し受講できるe−ラーニングですので、仕事や家庭との両立も可能です。

ただし、この通信講座を受講するにも必要な条件があるため、詳しくはホームページをご覧ください。

診療情報管理士|一般社団法人日本病院会

診療情報管理士に向いている人

では、診療情報管理士に向いている人はどんな人でしょうか。
資質をピックアップしてみたので自分に当てはまるかどうか見てみてくださいね。

責任感のある人

診療情報管理士は、カルテや検査内容など患者さんの重要な個人情報を多く取り扱う仕事です。
そのため、コンプライアンス意識が高く、責任感がある人が求められます。

几帳面、細かい作業が得意

診療情報管理士が取り扱う情報の中には、医療機関の経営や患者さんの命までも左右するような内容があります。ミスが起こらないように几帳面で細かい作業が得意な人に向いているでしょう。トラブルを未然に防ぐ危機管理能力も求められます。

データや数字が好きな人

単なる入力作業だけでなく、細かな数字を見てデータを確認・分析できることが必要です。データや数字が好きであれば適性があります。
長時間一人でパソコンと向き合っても苦にならない人も向いているでしょう。

ITリテラシーがありパソコンスキルがある人

仕事は主にパソコンを使用します。パソコンに関する基本的な知識はもちろん、ITスキルを習得する勉強を自ら進んでできるといいでしょう。
高いITリテラシーとパソコンスキルが求められます。

診療情報管理士のメリット・デメリット

診療情報管理士の仕事のメリットとデメリットについて実際に働いている人の声を集めました。

診療情報管理士になるデメリット

診療情報管理士になるデメリットについてよく挙げられたのは以下の2点でした。

■認知度が低い

実際に働く医療機関の環境や方針によっては、診療情報管理士の資格自体の認知度が低く、医療事務の仕事と兼務することもあります。

医療事務と比較すると資格の歴史も浅いため、日々専門知識を勉強し、周囲に診療情報管理士としての実力をアピールしていく必要があります。

■孤独を感じる

診療情報管理士は医療機関内での人数も少なく、パソコンの前に座って黙々とデータと向き合うため孤独を感じやすいです。
コミュニケーションをとるのは医療機関関係者が中心で、患者さんとのやりとりはほとんどありません。

診療情報管理士になるメリット

診療情報管理士になるメリットでよく挙げられたのは以下の4点です。

■将来性がある

電子カルテなど、さまざまな医療情報がデジタル化していく中で、高いITスキルを持った診療情報管理士は今後も必要とされる存在と言われています。

■給与面

診療情報管理士と医療事務を比較するとあまり差はないのですが、資格を持っていると資格手当がつくことがあります。

また、長く働ける仕事であり、年次と共に給与も上がっていくことが期待できます。

■業務形態が安定している

看護師や医療事務などと違い、夜勤や早番・遅番というシフト制は少なく、基本的には土日祝日に休みをもらえる仕事です。
残業もあまりないようで業務形態が安定しています。

■替えのきかない専門職である

診療情報管理士は、医療の専門知識だけでなく、ITに関する知識や技術も身につけておく必要がある専門職で、誰でもできる職業ではありません。医療現場において替えのきかないポジションであるため、職場においても重宝されるでしょう。

■医療や診療報酬の知識が身につく

診療情報管理士は、医師とのやりとりをする機会が多く、専門的な知識をいかしたコミュニケーションをとる機会が多くあります。時には、医師の間違いを指摘することもあり、常に最新の学術的な知識を学んでおくことが必要です。
また、会計に関わる仕事も行うため、診療報酬の知識も身に着けることができます。

医療事務として活躍できることもあるため、医療事務資格をとっておくのもキャリアアップのひとつとしておすすめです。

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まとめ:診療情報管理士はデータの専門家!資格に挑戦しよう

診療情報管理士は、医療の重要なデータを取り扱う専門家であり、今後IT化がますます進んでいく医療業界の中で需要が高まっていく仕事のひとつです。

診療情報管理士の資格を取得するのは簡単ではありませんが、専門職として自信を持って働けるように、ぜひ資格に挑戦してみましょう!