診療報酬改定とは?診療報酬の用途や疑問を簡単にわかりやすく解説

診療報酬改定とは?診療報酬の用途や疑問を簡単にわかりやすく解説

2023.08.07 その他

【医療事務のパイオニアソラスト監修】医療に関わるすべての費用の支えになっている診療報酬は、医療を受けた患者と医療保険の支払から賄われています。
診療報酬は基本的に点数によって値段が決まり、その点数については2年に1度の改正が実施されています。

この記事では診療報酬についての具体的な説明や用途、改正についての疑問を簡単にわかりやすく解説しています。

医療や診療報酬について気になること、知りたいことがある人はぜひ最後までご覧ください。

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まずは知りたい診療報酬ってなに?

「診療報酬」とは医師が患者を診療した際に、医療機関が受け取る報酬のことです。

1〜3割の自己負担分は患者さんが払い、残りは加入している医療保険者が医療機関に支払います。

診療報酬は「医科」「歯科」「調剤」の3区分です。あわせて、薬価材料価格「薬価等」として設定されています。

診察、検査、処置、投薬、手術、入院など医療行為ごとに点数として設定されており、全国一律で1点は10円換算です。

診療報酬の包括評価は、平均的な医療資源投入量に見合う報酬を支払うものであることが前提です。

包括評価の対象に該当する症例・包括項目全体として見たときに適切な診療報酬が確保されるような設計とされています。

出来高払い方式と包括払い方式

診療報酬の算定方法は二種類あります。

1つ目は出来高払い方式です。
ひとつ一つの医療行為ごとに点数が設定されており、それらを合算して算定する方式となります。

2つ目の包括払い方式とは、いくつかの治療行為をまとめて点数化した算定方式です。
ある病気の検査と投薬と点滴をまとめて〇〇点といったかたちで算定します。

それぞれの特徴をみていきましょう。

【出来高払い方式】

  • ● 医療行為ごとに細かな点数(診療報酬)を設定、その合計点数(合計額)が医療費となる。
  • ● 実際に行われた診療内容に応じ、値段が決まるため合理的。
  • ● 必要以上に医療行為が行われる(過剰医療)可能性がある。

【包括払い方式】

  • ● 定額医療費を基本として計算する方式。
  • ● 必要な医療行為だけが行われて支払いが明瞭で医療費の削減につながる。
  • ● 過剰医療を避けるためにも、包括払い方式を用いて算定する病院が増えています。

入院1日あたりの医療サービスの費用は疾患ごとに決められており、それに基づいて入院日数に応じて診療報酬が設定されます。

「この病気の治療のための入院なら支払いはいくら」とあらかじめ支払額が決まっているため、過剰医療の抑制が期待できます。

診療報酬は何に使われているの?

診療報酬は、人件費や医療器具、医薬品代にはじまり、医療機器、施設維持・管理費用などに使われます。

病院の運営に欠かせない大切なお金です。

診療報酬は2年ごとに改定?診療報酬改定とは

「数年に1度改定されているイメージだけど、診療報酬改定は何年ごと?」
「なんで定期的に改定するの?」
「どんな内容が改定されるの?」

というよくある疑問について、お答えします。

原則として2年に1度、薬価は1年に1度、診療報酬改定が行われます。

診療報酬は、2つに分けられます。

【技術やサービス】

医科診療報酬、歯科診療報酬、調剤報酬

【もの】

薬価・材料価格

診療報酬改定の流れ

診療報酬改定の流れは以下の通りです。

  • ① 内閣が年末の予算編成の際に改定率(医療費の総額)を決める
  • ② 中医協(厚生労働省の中央社会保険医療協議会)にて改定内容を審議
  • ③ 厚生労働大臣が決定する

中医協は三者構成

  • ● 公益委員(学者など)
  • ● 診療側委員(医師の代表、日本医師会など)
  • ● 支払側委員(健康保険組合の代表など)

改定されるのはどんな内容?

医療技術や社会情勢に合わせた改定内容となっているため、必要に応じて改定内容は異なります。

例をみてみましょう。

令和4年の改定内容

  • ● 外来医療の機能分化・連携に向けた、かかりつけ医機能に係る診療報酬上の措置の実態に即した適切な見直し
  • ● 医師・病棟薬剤師と薬局薬剤師の協働の取組による医薬品の適正使用等の推進
  • ● 外来医療等のデータ提出を始める医療機関のスケジュール(届出や通知のタイミングなど) など

参考:令和4年度診療報酬改定の概要 【医科】 東海北陸厚生局

なぜ?診療報酬を2年ごとに改定する理由

医療技術の進歩が速く、経済や社会情勢に応じて改定する必要があるため、2年ごとに改定します。

2年ごとに改定する理由は大きく3つあります。

  • ● 医療技術の進歩
  • ● 社会情勢の変化
  • ● 経済状況の変化

詳しくみていきます。

【医療技術の進歩】

医療サービスや技術が進歩するにつれて、新しい治療法や医療サービスが生まれます。これらを医療現場で実行するために、診療報酬改定が必要です。

【社会情勢の変化】

社会情勢が変化するにつれて、医療ニーズも変化します。たとえば高齢化社会では高齢者向けのサービスが必要になることも、これに該当します。

【経済状況の変化】

国民皆保険制度に基づいて、診療報酬が支払われます。医療費の支払いに対する国民の負担は、経済状況が変化するとそれに伴って変化することがあります。

ちなみに、介護報酬の改定は3年に1回です。医療報酬とはタイミングが異なります。

診療報酬の点数(公定価格)の基準と計算方法

病院で診察を受けた後、会計で領収書を受け取ります。

そこに「初診料〇〇点」「検査〇〇点」と書いてあり、最後に合計額が〇〇円と書いてあるのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。

点数から金額への換算、点数の基準などよくある質問ついてご説明します。

診療報酬は1点何円?

1点10円です。

診療報酬の点数は全国どこでも変わらないって本当?

全国どこでも変わりません。

診療報酬の点数はどうやって決まっているの?

医療行為に対する点数は、公定価格といって厚生労働大臣が医療行為ごとにそれぞれ決めています。「診療報酬点数表」という値段一覧がまとめられていて、だれでもインターネット上で閲覧または書店で購入できます。

診療報酬算定や改定に関する内容は「疑義解釈資料」で確認することもできます。これは厚生労働省から都道府県などに発出される資料で、医療機関などから受けた問い合わせ内容について取りまとめられています。一問一答式で書かれているため、読みやすく実際の業務に反映しやすい内容です。

加算や初診料ってなに?

診療報酬のなかには初診料や再診料、時間外加算などの設定があり、決められた要件を満たしたときに点数を加算する仕組みとなっています。

初診料

怪我や病気などで初めて受診した際に、医療機関から請求される費用(患者さんが自己判断で治療を中止し、一ヶ月以上経過したあとに同じ医療機関で治療を受ける場合には、同じ症状・同じ病名でも初診料が請求されます)

初診料

同じ医療機関を継続して受診した際に請求される費用。治療が一度で終わらないときに発生します。

時間外加算

診療時間以外に受診した場合に請求される費用。

初診料

子ども(6歳未満)が受診した際に請求される費用。

※令和4年改定を例に仮で作成したもの

診療報酬改定率の推移

参考:診療報酬改定について|厚生労働省

診療報酬改定率は年度によって異なりますが、過去数年間においては引き下げ傾向にあります。

医療事務の仕事で大切な「診療報酬請求」

診療報酬請求は医療事務の仕事のひとつであり、医療機関の経営に影響を与える重要な業務です。

毎月すべての患者さんに対して、患者さんごとのカルテをもとに月単位でレセプトを作成し、支払い審査機関に提出します。

診療報酬請求には、正確性やスピーディーな処理能力が求められます。

医療事務担当者が診療報酬請求業務を適切に行うことで、他の医療従事者がそれぞれの業務に集中できるため、組織の業務効率化にも貢献しています。

医療事務が診療報酬改定について理解・対応すべき理由 

医療事務が診療報酬改定について理解・対応すべき理由は以下の3つからです。

  • ● 診療報酬改定は医療機関の運営に関わる
  • ● 患者さんにかかる負担の変化
  • ● 業務の適正化と効率化
  • ● 法律や規制の遵守

【診療報酬改定は医療機関の運営に関わる】

改定によって、診療報酬の内容や金額が変更されることがあるため、改定の内容はよく理解して、経営にどのようなインパクトを与えるか算出しておく必要があります。

【患者さんにかかる負担の変化】

医療サービスを受ける際の患者さんの自己負担額や保険適用範囲など、変わることがあります。医療事務は診療報酬の変更による患者の負担の変化を理解し、適切な情報提供や請求業務の対応を行う必要があります。

【業務の適正化と効率化】

医療機関は報酬の改定によって、より効率的な診療プロセスや経営戦略を構築し直すことを求められる場合もあります。医療事務は報酬改定に伴う業務の変更や新たな手続きに対応し、医療機関の運営を支えます。

【法律や規制の遵守】

診療報酬は法律や規制に基づいて支払われるため、医療事務は診療報酬の改定に関する法律や規制を理解し、遵守する必要があります。報酬の変更に伴って、新たな手続きや書類の作成が必要になる場合もあります。

医療事務が診療報酬改定について理解することは、医療機関の運営や患者へのサービス提供において重要です。

診療報酬の改定によって生じる変化に対応し、適切な情報提供や業務の適正化をおこないましょう。

まとめ:医療事務を目指すなら診療報酬の改正はしっかり学ぼう

すべての水準と密接な関係になっている診療報酬の改正は、重要な役割を持っています。

診療報酬の改正は、

  • ● 医療サービスの質の向上
  • ● 医療費の抑制
  • ● 医療制度の効率化
  • ● 将来の医療ニーズへの対応 など
  •  

さまざまな要素に関連して重要な役割を果たしています。

医療事務として、診療報酬改定について正しく理解し、スピーディーに業務をおこないましょう。

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