リカレント教育ってなに?社会人の学び直しにおける重要性を解説
2023.07.18 その他
【医療事務のパイオニアソラスト監修】リカレント教育は自己啓発やキャリアアップに向けた柔軟な学びの場であり、現代の多様なニーズに応える新たな学びの形として注目されています。
人生の転機やキャリアチェンジ時に活用する方も多いですが、早いうちから新たな知識やスキルを身につけることで、将来に向けての自己成長の道を切り開くことができるでしょう。
この記事ではリカレント教育について詳しく解説!リカレント教育を受ける方法や推奨されている理由、受けるメリットなどを紹介します。
リカレント教育とは
「そもそも、リカレント教育って何なの?」と疑問に思われる方もいると思います。
リカレント教育とは、義務教育を終えた社会人が、職業能力の向上のため生涯にわたり学び直しを繰り返すことです。
「リカレント」とは英語で「Recurrent」とつづり、「繰り返し」や「回帰」という意味で、日本ではそこまで浸透していませんが、欧米諸国では一般的な教育です。
学び直しを行い「仕事やキャリアに活かすこと」を目的としているリカレント教育。
例えば、MBA(経営学修士・学位)を取得するのに大学で勉強する人がいますよね。
MBAとは、大学院の修士課程で取得する経営学の学位のことです。
経営戦略、マーケティング、リーダーシップ等を学び、ビジネス現場での問題解決や思考、意思決定力を鍛えます。
リカレント教育を行うことで、ビジネスの場で活躍できる人材となれる可能性は高いといえます。
生涯学習やリスキリングとの違いは?
リカレント教育と似た言葉に、生涯学習やリスキリングがあります。
この3つの大きな違いは「目的」です。
| リカレント教育 | 生涯学習 | リスキリング |
---|
目的 | 仕事・キャリアに活かし、自己実現につなげる。 | 豊かな人生を送る。 | 新しいスキルの獲得。 |
内容 | 生涯働き続けられるように、仕事やキャリアに活かせる知識・技術などを習得する。 | 仕事以外にも、趣味や文化活動、社会活動、ボランティアなど人生を豊かにするためにおこなう学習。生きがいに通じる内容も含まれる。 | デジタル化によって生まれる新しい職業や大幅に変化が生じる職種に就くためのスキルを獲得する。 |
具体例 | ・MBA ・社会保険 ・労務士医療 ・介護事務 ・外国語 ・プログラミング | ・スポーツ ・料理 ・絵画 ・福祉 ・防犯 ・ビジネススキル | ・プログラミング ・WEBマーケティング ・AI活用データ分析・解析 ・動画編集 |
生涯学習は「豊かな人生を送る」という目的なので、リカレント教育やリスキリングとは少し違った印象ですよね。
リカレント教育とリスキリングは、「仕事・キャリアに関する学び」という点で似ていますが、リスキリングは「新しいスキル獲得」というより具体的な目的があるのが違いです。
近年日本でリカレント教育が注目され始めた理由
リカレント教育は、スウェーデンの文部大臣で後に首相となったオロフ・パルメによって提唱され、1969年のヨーロッパ文相会議で発表。1970年代に経済協力開発機構(OECD)が推進すると決定した教育概念です。
しかし、日本で注目されるようになったのは最近の話。理由はズバリ、少子高齢化なのです。
詳しく見ていきましょう。
少子化と人材不足の壁
ご存知の通り、日本では少子化とそれに伴う人材不足が問題視されています。
リカレント教育が注目される背景にある少子高齢化は、人材不足に直結する懸念点です。
同時に、平均寿命は延びているためライフステージも変化してきています。
今までは、学校を卒業したら就職し、定年まで勤めたら退職、退職後にリタイヤ(引退)後の生活を送るというライフスタイルが一般的でした。
しかし、現在は人材不足や働き方改革、情報技術の進展などでライフステージはマルチステージ化してきています。
よって、学校を卒業してからも新たな知識やスキルを身につける学び直しをおこない、生き方や働き方の選択肢を増やすリカレント教育が必要というわけです。
学び直しが必要不可欠!人生100年時代に突入
平均寿命の延びに触れましたが、実際はどれくらい変化があるのでしょうか?
リカレント教育が世界各国に広がった1970年代、日本の平均寿命は約72歳でした。
2023年現在では84.3歳にまで延びていることがわかります。
平均寿命が短かったころは、仕事を引退した後に学び直すという考えはほとんどありませんでした。
しかし、平均寿命が延びたことで引退後の人生も長くなっています。
人生100年時代と言われる現代は、退職金と年金だけでは充実した生活を送るのは難しい場合もあります。
生涯現役を前提に、自分自身でお金を稼ぐ力を身につけることが重要となってくるでしょう。
また、雇用の在り方にも変化があります。
新卒一括採用と終身雇用という考え方が一般的でしたが、スキルアップやキャリア形成を目的とした転職が当然の時代になりました。
生涯現役で生き生きと暮らすマルチステージ型人生への変化が求められており、組織にとらわれない働き方が増えてきています。
雇用の流動化が加速しているということです。
人生100年時代に対応していくためにも、年齢を問わず学び直してスキルアップにつながるリカレント教育が注目されるというわけですね。
デジタル産業の急激な技術革新
「デジタルディスラプション」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉はご存知でしょうか?
デジタル技術による破壊的イノベーションのことです。
Amazonの台頭で小売企業が経営破綻したり、NetflixやYouTubeなどの動画配信サービスによりレンタルビデオ業界が市場縮小を余儀なくされたりという事例が該当します。
IoTやビッグデータの活用促進、AIといった技術革新が進み、近い将来「第4次産業革命」が起こると言われています。
第4次産業革命が起こると、すべての産業がデジタル化の傘下となるでしょう。
変化に対応できる新たな知識やスキルの習得にはリカレント教育が欠かせませんね。
世界的にみても日本は学び直しが遅れている
リカレント教育が注目されてきている日本ですが、世界からは遅れを取っています。
日本は、意識的にも制度的にもまだ十分とは言い難い状況なのです。
皆さんの周りで学び直しのために大学に通う社会人の知り合いはいますか?
あまり多くないのではないでしょうか。
日本では
● 忙しい
● 費用が高すぎる
● 受講場所が遠い
● 関心・必要性がない
● 自分に合う教育課程がない
といった理由で学び直しが進んでいません。
社会人の意識改革はもちろんですが、リカレント教育に対応した授業科目を開設する大学を増やしたり、自己啓発を支援する制度を会社側が整える必要があります。
リカレント教育で得られるメリット
リカレント教育の概要や日本での現状を解説してきましたが、リカレント教育のメリットはどういったところにあるのでしょうか?
リカレント教育で得られるメリットは大きく3つです。
- ● スキルアップで収入やキャリアにいい影響を受けられる
- ● キャリアアップを目指した転職に挑戦しやすくなる
- ● 専門的な知識を得たり働き方を選べるようになる
詳しく見ていきましょう。
スキルアップで収入やキャリアにいい影響を受けられる
リカレント教育最大のメリットはスキルアップです。
業務内容と直結する資格を取得できれば、収入アップにもつながりやすくなります。
また、時代に即した知識や新しいスキルを身につければ、業務効率化になります。
特に、プログラミングやAIなど、デジタルスキルは必要となる場面が多くなるでしょう。
キャリアに良い影響ばかりです。
スキルアップは企業側にもメリットが大きく、仕事の効率化により生産性が上がることが期待できます。
これによって売上アップにつながる可能性もあるでしょう。
スキルアップした従業員が職場にいると、周囲へも良い刺激になり、リカレント教育に取り組む社員が増える好循環も期待できますよ。
キャリアアップを目指した転職に挑戦しやすくなる
転職時に強みとなるのが資格です。
キャリアアップを目的とした転職を考える場合、有資格者は優遇される傾向にあります。
資格があればアピールポイントとして強みとなり、転職活動に挑戦しやすくなりますよね。
また、リカレント教育で新たな資格を取得すれば、再就職にも有利です。
例えば、出産のために仕事を辞めた女性が再就職したい場合や、育児・介護などで休職や退職をすることもあります。
その場合は、ブランク期間を利用してリカレント教育に取り組むのがおすすめです。
資格があることで再就職先の選択肢が増えたり、復職後の給料アップにつながったりすることが考えられるからです。
専門的な知識を得たり働き方を選べるようになる
リカレント教育に取り組むことで、専門的な知識を得ることができます。
それが所属する企業が必要な知識やスキルであれば、手放したくない人材になれるのです。
企業が手放したくない人材になれば、多少の要望は通ることも多くなる可能性があります。
その1つが働き方です。
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行でリモートワークを経験した人も多いと思います。リモートワークのほうが自分に合っているのでこのままの働き方をしたいと希望する人もいるでしょう。
リカレント教育によって、企業が必要とするスキルを習得できれば、リモートワークをしたいという要望も通るかもしれません。
介護や育児をしながら働きたい、フレックスタイムがいい、時短勤務にしてほしいといった希望も叶いやすくなるはずです。
リカレント教育への支援制度(給付金・助成金)
リカレント教育には多くのメリットがあることがわかりました。
しかし、学び直しや資格取得には経済的な心配もありますよね。
国が導入しているリカレント教育に関する支援制度があります。
一例を紹介するので参考にしてみてください。
対象 | 助成金・支援制度名 | 概要 |
---|
労働者 | 一般教育訓練給付金 | 対象講座終了で、自ら負担した受講費用の20~70%の支給を受けられる。 |
労働者 | キャリアコンサルティング | 在職中の人を対象に、今後のキャリアについてキャリアコンサルタントに無料相談できる。 |
事業主 | 人材開発支援助成金 | 事業主が従業員に対して訓練を実施した場合や、教育訓練休暇を与えた場合に、訓練経費や制度導入経費等の助成が受けられる。 |
事業主 | 生産性向上支援訓練 | 専門的な知見とノウハウを有する民間機関等に委託し、事業主のニーズに応じて訓練を実施。カリキュラムのカスタマイズも低コストで受けられる。 |
労働者個人だけではなく、事業主も受けられる支援があります。
上手に活用していきたいですね。
リカレント教育を受けるならどこ?おすすめの方法を紹介
リカレント教育を受けられる場所は大学だけではありません。
- ● 国の制度を利用する
- ● 企業が実施している制度
- ● 大学・大学院
- ● 通信教育講座
と大きく4つの方法があります。
それぞれ紹介していきます。
国の制度を利用して学ぶ
リカレント教育に国が支援制度を提供していますが、学びの場もサポートしています。
文部科学省が運営するポータルサイトにマナパスがあります。
マナパスでは受講場所や受講料、分野などから自分に合った講座選択が可能です。
経済産業省はデジタルスキルを身につけられるオンライン講座、マナビDXを提供しています。
デジタルスキルに特化した講座を紹介しているうえ、経済産業省の審査基準を満たした講座なので受講においても安心感があります。
企業が実施している制度で学ぶ
企業によっては独自に教育や研修をおこなっている場合があります。
外部講師を招いたり、社内の専門知識がある人を講師としたり形式はさまざまですが、学び直しの機会が提供されているケースです。
企業でおこなわれるため、多くの場合は移動の必要がなく業務時間内に受講できる点がメリットですね。受講料もかからないことが多く、勉強のために休職や退職をする必要もありません。
企業側が従業員に学んでほしいスキルや、取得してほしい資格に対する講座となるため、社内評価に直結しやすいのが特徴です。
大学・大学院で学ぶ
学びの王道、大学・大学院で学ぶ方法です。
最近では、社会人向けのリカレント教育にマッチした講義をおこなう大学も増えてきています。
文部科学省のサイトにある「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」から、リカレント教育プログラムを実施する大学とプログラムが閲覧できます。
通学が難しい場合は、オンライン講座を実施する大学・大学院で学ぶ方法がおすすめです。
早稲田大学や慶應義塾大学、立命館大学などの有名大学をはじめ、さまざまな大学でオンライン講座を受けられます。講座内容も幅広く、ビジネスや資格、外国語などがありますよ。
専門知識を体系的に学びたい人におすすめです。
まとめ:リカレント教育を知って自分の未来のためのスキルアップを図ろう
日本では世界に遅れを取っているものの、注目されはじめているリカレント教育。
社会人が学び直しをおこない、スキルアップを目指すものです。
人生100年時代と言われ、生涯現役とされるライフステージを考えるうえで、誰もが考えなければならないものでしょう。
転職や再就職、理想の働き方を実現するためにも、資格取得や新しいスキル・知識を得ることは大切です。
大学・大学院以外にも、オンライン講座や通信講座など自分に合ったスタイルでリカレント教育に取り組んでみませんか?
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