認知症介護について|家族がするべき対応や認知症について解説
2023.11.22 介護事務
【医療事務のパイオニアソラスト監修】これから認知症介護をはじめる人は、認知症についての心得や正しい知識を身につけ、備える必要があります。
日本の認知症患者の人数は、2025年には約675万人にもなると予測されています。これは65歳以上の高齢者の約5.4人に1人が認知症になるという数字です。
認知症はある日突然はじまる誰もがなる可能性のある脳の病気です。
徐々に進行していき、気がついた時には重症化していることも。大切なご家族を守るためにも、認知症は早期発見が大切です。
とはいえ、右も左もわからない状態では、何からはじめたらいいのか、これからどうなってしまうのか、漠然とした不安に襲われることもありますよね。
事前に介護の知識をつけておくだけでも、介護疲れのストレスは軽減されることもあります。
この記事では、大切なご家族が認知症になってしまった時の対応や介護方法について、やるべきこと、心得ておくことを解説します。
認知症とはどんな病気?よくある症状を知ろう
認知症とは、脳の機能が一定程度低下する状態のことを指します。
この機能低下によって、日常生活や社会生活に必要な思考・記憶・判断力などが影響を受けて自分ひとりでの生活が困難になってしまいます。
よくある認知症の症状としては中核症状・周辺症状と呼ばれるものがあります。
〈中核症状の一例〉
・記憶障害:名前や日時、場所、日常の出来事や話したばかりのことを忘れる
・見当識障害:時間や季節感覚が失われたり、方向感覚がなくなったりする
・理解・判断力の障害:考えるスピードが遅くなる、一度に複数の情報が処理できない
・実行機能障害:料理や着替えが難しくなる
など
〈周辺症状の一例〉
・気分の変動:怒りやすくなる、すぐに泣いてしまう
・不安や恐怖:特に夜間に不安を感じてしまう
・幻覚・妄想:ないものを見る
・食欲の変化:過食・拒食、偏食
など
以前は「痴呆症」と言われていましたが、侮蔑的な意味合いが含まれるとして2004年に「認知症」という病名に統一されました。
認知症にはいくつかの種類があり、最も多いのが認知症のうち約67%を占める「アルツハイマー型認知症」です。他にも「レビー小体型認知症」や「血管性認知症」などがありますが、それぞれ原因や症状が異なります。
多くの場合、認知症は高齢者に多くみられますが、病気や事故、遺伝などの要因によって18歳〜65歳未満で発症する「若年性認知症」もあります。
現在、認知症を根本的に治療する方法はありませんが、進行を緩やかにしたり、症状を和らげたりする治療が行われています。
2025年には5.4人に1人(65歳以上)が認知症患者になると予測
内閣府が発表した資料によると、2025年には約5人に1人が認知症患者になると予測されています。
高齢化社会である日本では認知症患者の増加は避けられなくなっているのです。
認知症かなと思ったらすぐに病院へ相談
認知症は早期発見が重要です。
大切なご家族が「もしかして……認知症かな?」と思ったらすぐに病院へ相談しましょう。
かかりつけ医や、医療機関の「もの忘れ外来」の他にも、自治体が設置している相談窓口などもあるので、状況に合わせて利用してください。
家族が認知症に!どんな対応や介護をしたらいい?
ここからは家族が認知症になってしまったとき、どんな対応や介護をしたら良いでしょうか。
ここからは、よくある認知症の状況に合わせて解説していきます。
ご飯を食べていないと言われたら
ご飯を食べたのに、食べていないと言うのには、認知症患者さんの満腹中枢の機能が低下して満腹感を得られていないケースや、記憶障害によるものが大きいです。
「さっき食べたばかりでしょ!」などと感情的になるのではなく、軽食を出したりお茶を出したりして落ち着いて対応するのが良いです。
食べたと言う証拠を写真などで見せる方法は、逆効果になってしまうことがあるので注意しましょう。
トイレ(排泄)がうまくいかなくなってきたら
トイレの失敗は認知症患者さん本人にとっても、ケアをする側にとってもストレスが大きい問題です。
トイレの場所を迷わないように大きな貼り紙をしたり、トイレにいくタイミングをルーティン化するなどして対策をとりましょう。
失敗をしてしまったときも、プライドを傷つけないように冷静に対応しましょう。場合によってはオムツが必要になることもありますが、できるだけ自分でできるようにサポートする配慮が必要です。
怒りっぽく攻撃的な性格になってきたら
認知症患者さんが怒りっぽくなってしまう原因として、不安や疲れ、混乱などの背景があることがあります。
まずは対応する側の安全を確保しながら、相手の感情に寄り添い、落ち着いたトーンで声をかけましょう。
安全が保たれない危険な状況になった場合は、専門家に相談して薬物療法などを行う場合もあります。
幻覚や妄想が出だしたら
「お金や宝石を取られた!」「お化けがいる!」といった幻覚や妄想であっても、認知症患者さんの中では現実です。
否定から入るのではなく、「それは大変ですね、一緒に探しましょう。」などと落ち着いて寄り添った対応をすることが大切です。
危険な行動を伴う場合は、専門家のサポートのもと医療ケアが行われることもあります。
一人で外に出ようとするなら(徘徊)
勝手に一人で外に出るようになってしまった場合、まずは自宅のドアに新しくロックをつけたり、アラームをつけたりすることが第一ステップです。
車の運転をしてしまう場合も大変危険なので、免許証は返納し、すぐに運転をやめさせるようにしましょう。
それでも徘徊してしまうときは、名前や住所がわかるものを常に身に付けさせたり、近所の人にも見かけたら教えてもらえるように声かけをしておいたりするのが良いです。
家族のことがわからなくなったら
認知症患者さんが家族である自分のことを忘れてしまったら、それはとてもショッキングな瞬間であるに違いありません。
そんなときでもケアする側は冷静になって「私はあなたの子どもですよ」などと優しく声かけをしたり、一緒に写っている写真を見せたりしましょう。
逆に混乱を招くこともあるので、状況に合わせて柔軟に対応することが大切です。
認知症介護の問題点
認知症介護の問題点には以下のようなものが挙げられます。
介護負担の増大
認知症の介護には、認知症特有の介護者負担があります。
例えば徘徊しないように常に監視しておく必要があったり、夜何度も起こされたりといった問題です。
また、家族がケアする場合は家族が以前と変わってゆく姿に大きな精神的ストレスを受けてしまいます。
システムの複雑性
認知症ケアに関する制度やサービスが多く、どれを利用すればいいか分かりにくいといった問題があります。
知識と理解不足
認知症に対する知識がないために早期発見・早期介入が進まず、認知症が進行してしまう可能性があります。
認知症介護をする大切な5つのポイント
上記のような問題点を踏まえて、認知症介護をする大切なポイントを5つご紹介します。
①認知症は見守ることが大切
まず第一に、認知症は見守ることが大切です。
認知症患者さんは、物事を理解するのに通常よりも時間がかかってしまいます。急がせないように、ゆっくりと相手のペースに合わせて介護を行います。
また、混乱させるようなことを言ったり、患者さん自身の自尊心を傷つけるような言動に気をつけましょう。
②介護者は心にゆとりを持つ
家族が介護を行う場合には、苛立ってしまったり悲しくなったりしてしまう場面が多くあるかもしれません。
頑張りすぎて介護者自身の心身が壊れないように、心にゆとりを持って接するようにしましょう。
専門家に相談したり、同じ境遇の人が集うグループに参加したりして認知症に対する理解を深めていくことで、心の負担を軽くすることができます。
③在宅介護にするか、施設介護にするか
家族の介護が決まったら、在宅介護にするか、施設介護にするかを選択します。
状況によってどちらが良いかは変わりますが、費用面では在宅介護の方が3分の1ほどの金額で介護を行うことができます。
【かかる費用の平均】
・在宅介護 4.8万円 / 月
・施設介護 12.2万円 / 月
出典:(公財)生命保険文化センター「「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度」
しかし、当然ながら在宅介護では介護者の負担が大きくなってしまいます。家庭の経済状況やスタイルに合わせて決めていきましょう。
ケアマネジャーに相談して意見を聞くのもおすすめです。
④誰が介護を担当するか
家族の誰が介護を担当するのか、家族間で事前に役割分担を行うことも大切です。
主に介護を担当する人をキーパーソンと呼びますが、キーパーソン1人に全てを押し付けてしまうことがないように、できるだけ複数でサポートするようにしましょう。
費用を負担する人、介護を行う人、役所への書類の手続きを行う人など役割を家族で相談し、分担することをおすすめします。
費用に関しては家族みんなで少しずつ出しあうなどして、全員が納得のいく方法を見つけていきましょう。
⑤介護にかかる費用を把握する
介護期間の平均が約5年で、介護にかかる費用が総額498万円かかるという調査結果(※)
があります。
(※)参考:(公財)生命保険文化センター「「生命保険に関する全国実態調査」
基本的には認知症患者さんの年金や預貯金で支払われることもありますが、場合によっては介護者の負担もあるかもしれません。
どのくらい介護費用が必要か家族で把握しておきましょう。
介護に使える免税制度は以下の通りです。困った場合に利用してみてください。
【介護に使える免税制度】
・特定入所者介護サービス費
・高額介護サービス費
・高額医療・高額介護合算制度
・社会福祉法人などの利用者負担軽減制度
・医療費控除
認知症の予防と治療方法は?
ここからは認知症の予防と治療方法について解説していきます。
認知症を完全に治療することはできません。認知症の予防・治療法というのは、認知症の症状を緩和させたり、進行を遅らせたりするための方法であることを理解しておきましょう。
リハビリで予防
認知症のリハビリについて、4つの方法をまとめてみました。
①認知訓練
②運動
③社会参加
④食生活の改善
①認知訓練
パズルや数独、言葉遊びなど思考を刺激する遊びを行います。
②運動
適度な運動を毎日行うことで健康を維持し、脳への血流を改善することができます。
③社会参加
グループ活動やコミュニケーションを行うことで精神的にも健康で、認知機能の低下を遅らせる可能性があります。
④食生活の改善
栄養バランスの取れた食事をとること、生活習慣病を引き起こす食生活を改善することで認知症のリスクを減らすことができます。
薬で治療
医師や専門家の指示のもとで、薬物療法を行うことで、認知症の問題症状を緩和させたり、進行を遅らせたりすることができます。
介護に関する知識があると、いざという時も安心
家族が認知症になってしまったとき、どうやって支えて行けば良いのか不安になってしまいますよね。
そんなときに介護に関する知識を持っていると安心です。
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まとめ:認知症は早期発見が重要!違和感を持ったらすぐに病院へ
認知症は早期発見が重要です。家族に違和感を持ったらすぐに病院に連れていきましょう。
その違和感に気付けるようになるためにも、まずは認知症について正しく理解することが大切です。
認知症や認知症介護についての知識とスキルを身につけていきましょう。