
患者さまとの対応の中で記憶に残っていること。それはちょっとしたトラブルからのでき事です。
平日のある日、「何をどういっても聞き入れる気はない」とおっしゃったまま、受付の真ん中で一歩も動かない方がいらっしゃいました。
その方は、「今日、内視鏡の検査を受ける約束をしていたのに、なぜ受けられないのか」ということでした。私たちの病院では、その曜日に内視鏡検査は実施していません。つまりお約束をすることはないはずなのです。
ただその方は、「検査を受けられるといった」と、同じ話を繰り返すばかり。看護師や男性スタッフが入れ替わり丁寧にご説明したのですが、状況は一向に変わりませんでした。その後いろいろとお話をした結果、患者さまご自身の検査前のご準備が整っていないということからも、後日あらためてお越しいただき検査を実施するということになりました。
一旦その場は収まりましたが、結果的には「解決した」といえるものではありませんでした。

この患者さまは、普段から私たちの病院に通われており、今までこういったトラブルはありませんでした。しかし今回はご自身の主張を曲げず、私たちの対応ミスだと判断をされてしまいました。
ただ、私はこの話を「ひどい話です」と言いたい訳ではありません。実はこのトラブルが、受付の運用を変えるきっかけになったのです。
この日のでき事を病院内で共有をしたところ、実は今までもこういう訴えがいくつかあったということがわかりました。「ではご案内を口頭だけでなく、文書でお渡しするルールにするべきだったよね」ということになり、それ以降似たようなケースも想定して、お伝えする方法を変えることにしました。
病院で患者さまの対応を任されるということは、その場だけの対応だけでなく、業務フローや組織全体の改善を考えるなど、患者さまにとってよりよい病院にするための工夫を積み上げていくことだともいえます。
医療現場での「接遇」は、私たち個人の成長にとって、とても大切なスキルであるとともに、病院全体のサービス向上のためにも、欠かせない重要なテーマだと日々感じています。