
あれは私が20代で、24時間体制の病院に勤め始めた頃のこと。
ある日の23時過ぎ。高齢の男性の方が、お嫁さんと思われる方と一緒に車椅子で病院へ来られました。スタッフの数も少ない夜中の対応。まだ研修生だった私ですが、受付やカルテなどの事務仕事だけでなく、自分なりにできるだけ患者さまの不安を取り除くような対応を心がけました。
処置が終わり病院を出て行かれる時には、タクシーを呼び、乗車いただくまで見届け、そして最後に「大丈夫ですか?」「お大事なさってください」と、精いっぱい声をかけました。
それから数日たったある日、その男性が再び診察に来られました。
「あのときはありがとうね。」
患者さまとご家族の方は、私のことを覚えてくださっていたのです。思わぬでき事に、うれしさがこみ上げてきたことを今でも覚えています。
これが、私にとって「接遇の大切さ」を実感させてくれた初めての体験です。

研修後は、残念ながら病院の受付ではなく経理部門に配属になりました。ところが、その後時々病院から電話がかかってくるようになりました。その電話は、「患者さま来てるよ。あなたの声が聞きたいんだって」それが1人ではなくて2人3人…に。
「あなたは若いのに、気遣いができて言葉遣いが丁寧で、えらいよね」って。
そんなお声をもらうことで、「人に対する言葉遣いや態度はいつもだれかが見ているんだ」って心から思えるようになりました。
それからも病院の待合室を通るたびに「元気にやってるの?」「数字、ちゃんとあってる?」って、みなさんが声をかけてくれるんです。
「たったひと言が相手の気持ちを変える」
だからこそ、まずは自分が相手の立場に立って心のこもった対応を心がける。そうすれば必ず、相手もこちらの気持ちを汲み取った対応をしてくれる。
「接遇」とは、そういう人と人の気持ちの交換なのかもしれません。
これからも「接遇」を軸にしっかり仕事に向き合っていきたいと思っています。